1. HOME
  2. すべての記事
  3. 機械と話す人たち。~工場の「何も起きない日」を守る~
ミウラとヒト

機械と話す人たち。~工場の「何も起きない日」を守る~

ミウラグループの心臓部ともいえる工場。そこでは今日も、何事もないかのように多くの製造機械が動き、ボイラをはじめとする製品が次々と生み出されています。しかし、その「何も起きない日」は決して偶然ではありません。その裏側には、見えない努力が積み重なっています。今回お話を伺ったのは、国内工場にある約300台の製造機械の保守を担う製造技術課と、それを現場で動かす三浦マニファクチャリングの皆さん。彼らは「お医者さん」と「患者」という関係を超え、現場をともに守る仲間でした。

プロフィール

いでぐち ひろし井手口 弘

IDEGUCHI Hiroshi

株式会社三浦マニファクチャリング
1大型生産部 シニアエンジニア

プロフィール

福岡県出身。学生時代から技術者を志し、縁あって三浦工業へ入社。生産技術、生産管理、三浦テクノ、福岡や北九州の現場メンテナンスなどを幅広く経験した頼れる大ベテラン。趣味はカメラと、息子のサッカー試合観戦。たまに社内報の表紙写真にも応募している。

取材2か月前に三浦マニファクチャリングに出向されましたが、製造技術課の立場でお話を伺いました。

井手口 弘

めぐみ ゆうき恵 祐樹

MEGUMI Yuuki

三浦工業株式会社 製造技術部 製造技術課

プロフィール

熊本県出身。20254月に前職の経験を活かして中途入社。ミウラを選んだのは、国内だけでなくグローバルに事業を展開しているところに魅力を感じたから。趣味は体を動かすことと、子どもとの公園巡り。

恵 祐樹

こんどう しんや近藤 慎也

KONDO Shinya

株式会社三浦マニファクチャリング
1大型生産部 1大型生産1課 主任

プロフィール

愛媛県出身。当時、三浦精機の課長だった叔父の紹介がきっかけで入社。現在は南吉田工場にて勤務、舶用部品製作などの生産機械を動かす現場のキーマン。余暇は子どもと遊んだり、旅行をしたりして過ごす。

近藤 慎也

1. はじまり —— いつもと変わらない工場の朝

工場にとって「いつも通りの朝」は、実は一番難しい状態です。何も起きず、何事もなくラインが動く。その裏には、見えない準備と気配りが張り巡らされています。

井手口さん撮影
近藤さん
私たち現場の人間にとって、朝一の立ち上げは、車を運転したり、家電のスイッチを入れるのと同じような感覚なんです。今日もスムーズに動いてくれたら、「よし、いつも通りの朝だな」ってホッとしますね。

けれど、その「いつも通り」を陰で支える製造技術課の朝には、独特の、心地よい緊張感が流れています。わずか10人足らずのメンバーで、ミウラの製造工場設備を見守っているからです。

井手口さん
点検や設備改造の予定がある日は、朝から準備物や段取り、トラブルが起きたときのシミュレーションで頭がいっぱいです。逆に点検がない日であっても、「今日は突発の故障がないな」なんて安心できる日は、実は一日もありません(笑)。いつ呼び出されるか、常に緊張感を持っています。

何もない一日は存在しない。そう言い切れるほど、彼らは見えないリスクと常に向き合っています。そんな製造技術課では、毎日のようにドラマが繰り広げられます。

井手口さん
課長の携帯が鳴るじゃないですか。その電話の話し方や切り方を聞いているだけで、「あ、これはヤバいトラブルだな、すぐには直らんぞ」ってピンとくるんです。そういうときは、電話の途中から後輩に「出動準備せないかんよ」と声をかけて、準備をはじめます。
恵さん
私はまだ中途で入社して1年ほどで、日々勉強の真っ最中です。だから、各工場からトラブルの連絡が入っても、先輩たちが少しも動じずに“何が必要か”を推測して、無駄のない動きで現場へ直行する姿を見るたびに、「凄いな……」って思います。

経験の差は動きの差になる——そう感じさせる瞬間が、日常の中に何度もあるといいます。

近藤さん
現場からすると、製造機械が止まってしまったら仕事が進まないので、本当に焦るんです。私が勤務している南吉田工場は、製造技術課からの移動に1時間はかかりますが、現場側での対応がどうしても難しいときはすぐ駆けつけてくれて、最低限の設備停止で復旧できるのは本当にありがたいことです。

突発的なトラブルが起きない日の方がめずらしい。そういう日は「今日は何も起こらなかったね」と声を掛け合い、帰路につく。その平穏な瞬間こそが、彼らにとっての最高のご褒美なのです。


2. 内作文化が育てた製造機械への愛

ミウラのものづくりには、創業期から受け継がれるDNAがあります。それは画期的な貫流ボイラを生み出すため、製造機械そのものまで自社で設計・製作する「内作文化」です。「ないものは自分たちでつくる」。製品だけでなく、それを生み出す仕組みから創り上げる強さが、ミウラの競争力の源泉です。

井手口さん
ミウラ製品のために開発された製造機械には、先輩や今のメンバーの知恵がたくさん詰まっています。自分が設計に関わった機械には、やっぱり特別な愛着が湧きますね。どの機械にも開発の苦労やエピソードがあって、単なるモノというより、そこには“人の意思”がちゃんと刻まれていると感じます。

単なる鉄の塊ではない、先輩たちの苦労がカタチになった製造機械。毎日それを使ってボイラなどの部品を製造している近藤さんの口からは、驚くような表現が飛び出しました。

近藤さん
堀江工場に「高周波設備1号機」という古い機械があるんです。本当にトラブルが多くて、でもその分、いろんな知識や経験を積ませてくれた存在ですね。つぎはぎだらけで、まるで「サイボーグのおじいちゃん」を相手にしているような感覚です(笑)。不思議なことに、作業する人によって調子が変わるんですよ。
今年はその“脳みそ”にあたる制御部が新しくなる予定で、こうやって大切に使いながら進化させていくのがミウラらしさだと思います。長く使うほど設備には癖や個性が出てきて、それと付き合っていくのもこの仕事の一部だなと感じます。
井手口さん
私たちがメンテナンスをするときは、自分が設計した製造機械だけでなく、他の人が設計した製造機械も触る必要があります。そのときに一番大切なのは、その設備や部品が「どういう意図(コンセプト)で作られたのか」を、現物からしっかり感じ取ることなんです。

恵さん
先輩からは「図面を100%信じるな、現物を見ろ」とよく言われます。長く使われてきた機械は、現場での工夫で少しずつ改良が重ねられており、図面どおりではないことも多いんです。だからこそ、まるで歴史を読み解くような難しさがあります。でもその図面と現物の違いこそ、この仕事の面白さだと感じています。
井手口さん
そう。設計者の意図を正しく汲み取れないまま、「これ邪魔っぽいな」って闇雲に部品を外してしまうと、事態を悪化させてしまう。改善のつもりが「改悪」になってしまうんです。だからこそ、機械を通して設計者の意図と会話をする慎重さが求められます。

市販の製造機械は、壊れればメーカーに任せるのが一般的です。でもミウラでは、自分たちで理解し、現場の声に合わせて改善や改造を重ねます。その積み重ねが品質と安定生産を支え、競争力の土台になっています。


3. 忘れられない“あの日”のトラブル

メンテナンスの現場には、あらかじめ用意された「正解」はありません。時には、誰も経験したことのない未知のトラブルが立ちはだかります。

恵さん
初めて点検後の生産立合いをしたとき、なぜか良品が出ず、どこを調整すればいいのか全く分からなくて、「このままでは帰れない」と目の前が真っ暗になりました。でも先輩は、原因を一つひとつ絞り込みながら、無駄のない判断で最短経路で復旧していったんです。

ピリピリした現場に思われがちですが、上司からは「少し力を抜いた方が続けられる」とも言われています。何が起こるか分からないからこそ経験を積み、引き出しを増やすことが大事。そのうえで、余裕を持って対応する力も必要だと感じています。トラブルは怖いですが、同時に成長の瞬間でもあります。

井手口さん
寒い時期に、夜中まで水回りの改造をやったこともありました。定時後の17時から始めて、2〜3時間の予定だったんですが、うまくいかなくて…。翌日の生産もあるので正直かなり焦りましたね。こういうときこそ、その人の判断力や経験が試されると感じます。

修理や改造が予定通りに進まないときは、途中で「引き返す勇気」も必要なんです。翌朝には工場が動くので、最悪は元に戻さないといけない。そのために、戻せる形で分解しておくことも大事ですね。これまでの苦い経験があるからこそ徹底していますし、「戻す判断ができる」こともプロの仕事だと感じています。
近藤さん
以前、原因を突き止めるために毎日工場に来てもらって、一つひとつ確認しながら対応している姿を見て、本当に頼もしいと感じました。会社の帰りにも顔を出してもらったこともあって、申し訳なさもありつつ、とてもありがたかったです。最後まで付き合ってくれる、その姿勢が信頼につながるんだと思います。

納期が迫り、一刻を争う緊迫した現場。暴言が飛び交いそうなピリピリした空気を想像しがちですが、彼らの現場は少し違います。極限の状況でもどこかに“余白”がある。そのゆとりこそが、このチームの強さです。

井手口さん
意外と、みんな楽しみながら仕事をしているんですよ(笑)。「早く直してみんなで早く帰ろう!」っていう、向いている目的が一つだから、お互いに気軽に意見を出し合える。大変な緊張感すらも楽しみに変えてしまうような、この課の雰囲気が私は好きなんです。


4. 裏方として、歩んできた道のり

世間的には、保守管理の仕事は「動いて当たり前、止まると責められる」と思われがちです。正直しんどい場面もありますが、それでも現場を支え続けています。

井手口さん
“普通に動く”状態をつくることほど難しい仕事はないと思っています。私たちの役割は、修理して当たり前の状態に戻すこと。直接お客様と接することは少ないですが、生産を支えているという自負はあります。夜中まで対応して、翌日何事もなかったように動いたときや、考え抜いて復旧できたときは、やっぱり誇らしさを感じますね。
近藤さん
三浦マニファクチャリングの仕事も製品をつくる裏方だと思うんですよね。裏方同士の信頼関係はすごく大事だと感じています。つくるのも直すのも結局は人と人の仕事で、やり取りを重ねる中で「この人にはこう伝えた方が伝わりやすい」といったことも分かってきます。一方通行ではなくて、お互いに意見を言い合える関係が大切だと思っています。
井手口さん
遠慮して些細な変化を伝えられないこともありますよね。でも製造機械のお医者さんとしては、その小さな違和感こそ知りたいんです。普段から雑談もしながら気づきを共有できる関係を大事にしています。想いは一つ、「この設備でいい製品をつくりたい」。そうした小さな気づきに気づけるかどうかが、プロかどうかの差だと感じています。


5. 製造現場からの“ありがとう”が力になる

やっと製造機械が正常に動き出した瞬間。現場からは自然と「助かりました、ありがとう」と声が上がります。裏方の仕事は評価されにくい——そう思っていたのは、実は外から見ている人だけかもしれません。

恵さん
修理して直ったときに、現場の人たちから直接「ありがとう」と言ってもらえると、一番モチベーションが上がりますね。「また頑張ろう」と心から思えますし、ダイレクトに届く一言は何より確かな手応えになります。
井手口さん
直ったときは、お互いに「ありがとうございました!」って自然と言い合うんです。「直してやったぞ」という感覚はまったくなくて、製造機械が元通り動いたという安堵感の方が大きいですね。そして「また一つ引き出しが増えたな」と、自分の中で静かに満足しています。直した達成感よりも、元に戻った安堵感。そこにこの仕事の本質があると感じます。

近藤さん
現場としては、製造技術課の皆さんに日々、使いやすさや安全面でいろいろ無茶をお願いしています。私の夢は、今は半自動の「サイボーグのおじいちゃん(高周波設備1号機)」を、いつか完全自動にしてもらうことです(笑)。こうした現場の「こうしたい」という声を気兼ねなく伝えられるのは本当にありがたいですし、それが次の進化につながっていくんだと思います。そういう声を受け止め合える関係性こそが、ミウラの強みだと感じています。

6. 終わりに —— 工場の「何も起きない日」のために

最後に、未来の仲間たちへ向けて3人からメッセージをもらいました。

恵さん
製造機械のお医者さんとして、健康診断から緊急治療、オペ・大手術まで行いながら、日常生活を送るための健康管理まで手厚くサポートしています。何が起こるか分からない、それもまた一つの楽しみとして経験を積んでいける。ミウラは、型にはまっていない自由な職場だから、経験が浅くても自分のアイデアをどんどん提案できるチャンスがある。そして自分が関わったことが、ダイレクトに現場の形になって現れ、目の前で製造機械が動く。こんなに楽しいことってなかなかないと思います。

近藤さん
私たち製造も、目に見えないところで製品を支える裏方です。でも、表に見えなくても、裏方は絶対に欠かせない存在。ひとつの製品を作るために沢山の人が協力し合っているからこそ、尽力してくれている仲間に感謝しながら、自分も誰かから感謝される人材になりたいです。
井手口さん
世の中では、表に出る華やかな技術者よりも、実は床下で泥臭く支えている技術者の方が圧倒的に多いんです。この仕事は、やってみないと分からない奥深さがあります。自分の技術でミウラ製品を支え、その先のお客様の現場にもつながっている——そんな実感がやりがいになっています。これからも誇りを持って経験を積んでいきたいですね。

明日もまた工場に朝が来れば、機械のスイッチが入ります。製造機械のお医者さんたちの静かな情熱と深い愛情に支えられながら、ミウラのものづくりは、明日も「当たり前」の日常をつないでいきます。誰にも気づかれなくてもいい。それでも確かに価値がある。そんな仕事が、ここにはあります。

井手口さん撮影

あとがき

裏方という仕事に、正直どこか「報われにくい」というイメージを持っていました。でも取材を通じて、その印象は大きく変わりました。どんなトラブルにも冷静に向き合い、やり切れば自分の引き出しと糧になる。
お互いをリスペクトしながら、自分なりの満足も大切にしている姿がとても印象的でした。“当たり前”は自然に生まれるものではなく、誰かの努力で支えられているのだと実感できた取材でした。

おまけ

製造機械に「パパロボ」と呼ばれ親しまれている設備があります。正式にはパイプパレタイジングロボットで、出来上がった水管をラックの中に規則的に積み上げる機械です。半世紀前にOBのBさんがつくり命名され、今もミウラの現場では「パパロボ」と呼ばれ活躍しています。製造技術課のメンバーの中には、自分たちがつくった機械に愛称を付け後世に残したいと密かにチャレンジを続けている人もいるそうです・・・

キーワード

おすすめ記事

新卒採用 エントリー受付中 新卒採用 エントリー受付中 キャリア採用 こちらをクリック キャリア採用 こちらをクリック
PAGE TOP