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ミウラとヒト

恐竜博士が見つめる“未来の地球” 〜サステナブルな未来のヒント〜

2025年8月24日〜10月19日までミウラート・ヴィレッジで開催された「愛媛/松山ミュージアム・ストリート特別企画 真鍋博展~ミライを拓く」。

この展示にあわせて10月4日、真鍋 博さんのご子息であり、恐竜研究の第一人者でもある真鍋 真さんの記念講演会「真鍋博と、ときどき恐竜」が開催されました。

真鍋 真さんは、国立科学博物館 名誉研究員、群馬県立自然史博物館 特別館長として、恐竜の進化や絶滅の研究を続ける一方で、環境問題や人間の生き方にもあたたかい視線を向けてきました。

ミウラート・ヴィレッジは、三浦工業の創業者・三浦 保が「文化を通じて人と地域を元気にしたい」との想いから設立した美術館。不思議な縁に導かれるように、真鍋 博さんと三浦 保は同世代で、同じ年齢にこの世を去りました。

過去と未来、科学と芸術、親と子。
その“つながり”を感じながら、真鍋 真さんに恐竜の絶滅から現代社会へのメッセージを伺いました。

まなべ まこと真鍋 真

MANABE Makoto

国立科学博物館・名誉研究員、群馬県立自然史博物館・特別館長。

恐竜研究の第一人者として、国内外の地層や化石の調査・研究を行う。恐竜の絶滅や進化のメカニズムを解明しながら、科学を通じて自然と人間の関わりをやさしく伝える語り口に定評がある。著書に『きみも恐竜博士だ! 真鍋先生の恐竜教室』『恐竜学』、『絶滅の発見』など。

真鍋 真

「未来への期待と不安」はどの時代にもあった

ー技術が進歩して便利になる一方で、「自分で考える時間が減っているのでは」と不安の声が上がることもあります。
こうした“便利さと人間らしさ”のバランスについて、先生はどのように感じていますか?

真鍋さん:
便利になること自体はいいことです。でも、あまりに便利なものが増えすぎると、自分で考えたり感じたりする時間が少なくなってしまいますよね。自分がなくなってしまう不安が出てくる。

でもこの感覚って、今だからあるのではなく、1970年代の万博の頃からありました。本質的な課題として、いつの時代にもあると思うんです。

同時に、「だからこそ、地に足をつけた人間らしい暮らしをちゃんとしていこう」という意識を持った人もたくさん出てくる。どんな時代にも。

例えば、真鍋 博が描いた世界のことをみなさん「懐かしい」っておっしゃっていただくんだけども、1970年の時にも、今の2025年にもそれぞれ「過去・現在・未来」がありますよね。昔からみた未来が、今では現在になっていたり、もう過去になっていたりする。

だから、「今、見ている未来は、やがて過去になっていく」という意識を、みんなでできるだけ前向きに持っておくことが大事だと思うんです。

真鍋 博は『未来は占うのではなく創るもの』という言葉を残していますが、これから何が変わって欲しいのか、どういう風になっていくのがよいかみたいなことが話題に及ぶような・・・そんな時間があるといいなと思います。

真鍋 博さんは自身の作品のなかに「未来」というテーマを見出し、1970年の大阪万博でも数多くの仕事を手掛けました。

ー今は“時短”や“効率化”が正義のような風潮もあります。

真鍋さん:
ええ。でも、自分で試行錯誤する喜びを失いたくないですね。
私のアメリカ留学時代、恩師の先生は何も教えてくれない人でした(笑)。
「これから君が登る山の頂上の景色を、私が事前に描写するなんて野暮なことだ。自分で登って見た時の感動が一番だからね」と。

ディスカッションの授業で、過去の論文を引用すると、「なんでそんなことが分かるんですか?人の論文ですよね?あなたは論文に書いてあることを全部信じるんですか?」って、絡んでくる・・・。

その時は大変でしたが、おかげで後から「自分でシミュレーションしてみて良かったな」と思える瞬間をたくさん味わうことができました。

自分で試行錯誤して“発見”する喜び。

それを味わえるぐらいの時間の余裕というか、心の持ち方が大切だと思います。

アルゼンチンでの恐竜化石発見時の真鍋さん (写真提供:真鍋真さん)

恐竜の絶滅が語る「多様性の力」

ー 恐竜の絶滅についてもお話を伺いたいです。
あれほど繁栄した生き物が、なぜ滅んでしまったのでしょうか?

真鍋さん:
約6,600万年前に、ユカタン半島付近の浅い海に隕石が落ちたんです。
衝突で粉々になった隕石と地球の破片が大気圏に舞い上がり、太陽光が届かなくなって、地球は急激に寒冷化しました。
植物が枯れ、大きな恐竜たちは草食でも肉食でも食べるものを失って絶滅していった。
一方で、小さな哺乳類や鳥たちは少ない食料で生き延びることができた。
つまり、恐竜にとっては運が悪かったとも言えるけれど、そのおかげで我々哺乳類にとっては出番が回ってきた。
そう考えると、絶滅も悪いことばかりではないんですよね。

ー「変化」は悪ではないんですね。では、不景気だったり、AIの発展だったり、転換期とも感じられる現代も・・・悪ではない?

真鍋さん:
そう思います。
「当たり前」が覆ることって、どの時代にもあります。
そう考えると、例えるなら「大企業は恐竜のような存在」かもしれないですよね。
強くて大きい存在でも、環境が変わればあっという間に立ち行かなくなる。
でも、小回りのきく“鳥”のような存在がいたからこそ、生命は続いた。
マイノリティでも、一見無駄に見えても、サバイバルするには多様性が重要なんですよ。

一つの組織の中でも、その中に多様性を持つことで、その組織やその周囲の社会がとんでもない破滅に向かわないようになっているなって思います。

だから、世代交代は自然なこと
悪いことではないです。

生物学者・福岡伸一さん*の言葉を借りると、「死は利他的なこと」。
いのちの循環は、次の世代を生かす働きでもあります。

※福岡伸一:分子生物学者。代表作に『生物と無生物のあいだ』(講談社現代新書)など。

「学び」は生きる力に変わる

ー 先生は震災のボランティア活動もされていたと伺いました。その時の経験を教えてください。

真鍋さん:
東日本大震災のとき、博物館の標本資料を救出する活動に参加しました。
そのときに避難所で恐竜の話をするボランティアもさせてもらったんです。

2011年12月23日仮設住宅のクリスマス会にてプレゼントを作るイベントを実施したときの様子(提供:真鍋真さん)

とはいえ、当初は「行方不明者を探すべきだ」「子どもが遊べる場を作るべきだ」という声もありました。

話を聞く人も、最初は少なかったです。

でも次第にどんどんギャラリーが増えてきて。
はじめの方では興味がなさそうにしていた中高生も、最後には質問責めで帰らせてくれない・・・みたいな状況に。

そのとき 「学ぶことは、生きる力につながる」と感じました。

もちろん食べ物や飲み物も大事です。同じ食べ物でも前向きな気持ちの時の方が美味しいと思いませんか?

でも、みんなが少しでも前を向いて生きていくためには、誰かと言葉を交わすことが大切なのではないでしょうか。

そして、新しい知識に触れて一歩でも前へ進もうとすることも、同じくらい大事だと思います。

化石燃料の時代をどう越えていくか

ー ミウラは、ボイラなど熱エネルギー技術に化石燃料を使っています。日本全体のCO₂排出量の2%を弊社製品から排出されているという事実があるので、 環境への責任を感じながらも、次の時代に向けて模索中です。

真鍋さん:以前は「今まではこれがベスト」だと思っていたことが、違う角度から見ると望ましくない結果になってしまった・・・ということは、常にあることだと思うんです。

でも大事なのは、「それに気が付いたときに、どういう風に調整するか」なんですよね。
みんなで問題意識を共有して、こういう解決策があるんじゃないか?とか、やってみよう!という空気感ができると、よい方向に変わってくると思います。

恐竜の話でいうと、6,600万年前にあれだけ繁栄していたものが絶滅し、それから何十万年もかけて生態系が変化をしていったわけです。それって、だんだんゆっくり起こっている変化なので、自分が生きている間には分かりづらいですよね。

たとえば、今、「もっとSDGsのことを考えないとダメじゃないか」っていう言われているけれど、ただ言われるだけでは地球の変化に実感が沸かないですよね。

だから、今年の夏の猛暑みたいなのを体感すると、「これだけの温暖化って、やっぱりまずいんじゃないか?」「来年どうなっちゃうの?」みたいなことを考える人たちが出てくる。

去年よりも、多くの人がそれに気づくことができる。
語り合う人が増えてくる。

みんなが前向きになって話せるようなきっかけがあるのは、未来から振り返って見たらきっとよいことだと思います。

言葉のキャッチボールで未来をつなぐ

ー最後に、未来を生きる私たちにメッセージをお願いします。

真鍋さん:
どんな時代にも、お年寄りもいれば赤ちゃんもいて、 それぞれが同じ時間を生きています。
その中で、一人ひとりのつながりを感じられることが大切だと思います。

最近はタイパ、コスパといった言葉が重視されて、言葉のキャッチボールをするような時間が減ってきているように感じます。

同じ気持ちを共有できる瞬間って、なかなか現れないと思うんですけど、そういう瞬間を発見することって贅沢ですよね。

たまたま出会ったご縁があるのなら、今ここで一緒にいる時間を大切にして、あんなことも、こんなことも話してみる。

それで、自分だけの発見をしたり、新しい自分を発見したり。

恐竜も、人間も、そして企業も。
変化の中でつながり合いながら、 38億年続いてきた生命のバトンを、これからも途切れさせないこと。

それが、私たちにできる一番の“サステナブル”だと思います。

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