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ミウラとヒト

強いチームに共通するもの。──プロバスケとFEが語る仕事の哲学

ミウラート・ヴィレッジに隣接する三浦工業の体育館で、愛媛オレンジバイキングス(以下、バイクス)の俊野達彦コーチ、俊野佳彦選手、玉木祥護選手と、バスケットボール経験を持つ三浦工業のFE(フィールドエンジニア)・吉村丈治さん、新田愛果さんによる特別座談会が行われました。

「バスケ」という共通言語を持つ5人が語ったのは、競技の話だけではありません。仕事にも通じる"プロフェッショナルの考え方"が、そこにはありました。

今回お話を伺った人たち

としの たつひこ俊野 達彦コーチ

愛媛オレンジバイキングス

松山市出身。現役時代は名ポイントガードとして活躍し、引退後はU15/U18の育成にも尽力。今季からチームのアソシエイトヘッドコーチとして、チームの戦略を組み立てる頭脳。

俊野 達彦コーチ

としの よしひこ俊野 佳彦選手

愛媛オレンジバイキングス

松山市出身。背番号13番、ポジションはシューティングガード。キャリア14年目を迎え、幾多のチームを渡り歩いて地元・愛媛に帰ってきた絶対的エース。

俊野 佳彦選手

たまき しょうご玉木 祥護選手

愛媛オレンジバイキングス

北海道出身。筑波大学卒業後、B1・B2クラブを経て愛媛へ。195cm・100kgの恵まれた体格を活かし、ゴール下で外国人選手相手に体を張り続ける、圧倒的な存在感を放つ大黒柱。

玉木 祥護選手

よしむら じょうじ吉村 丈治さん

三浦工業 神戸支店 尼崎メンテナンス課 西宮メンテ

1990年入社。JBA公認ライセンスを取得し、地元の中学校で12年以上コーチを続けているFE。息子さんもバスケをしており、その応援も楽しんでいる。

吉村 丈治さん

にった まなか新田 愛果さん

三浦工業 FE技術開発部 バリデーション課

2018年入社。現在も社会人チームに所属する現役プレーヤー。学生時代はバイクスのボランティアスタッフとしてアリーナを支えた。現在の部署では2年目のフレッシュな若手FE。

新田 愛果さん

なぜバスケを?それぞれの原点に迫る

みなさん、今日はよろしくお願いします。さっそくですが新田さん、隣にバイクスの皆さんが勢ぞろいしていますが、今の心境は?

新田さん
(ミウラ)
実は先週、自分の試合があったときに、隣でU18(アンダー18)の試合をやっていて。「めちゃくちゃかっこいいコーチがいる!」とみんなで騒いでいたんです。今日ここにそのコーチ(達彦コーチ)が現れて、本当にびっくりしています!(笑)

「かっこいい」って、スポーツにおいて最高の動機ですよね。みなさんのバスケを始めたきっかけも、やっぱりそこだったりしますか?

玉木選手
(バイクス)
僕はまさにそうです。(笑)中学までは野球部だったんですが、『黒子のバスケ』が流行していて、『高校生になったらみんなダンクできるんだ!』と思い、始めました。実際は誰もそんなに跳べませんでしたけど、夢中で走り回る楽しさにハマって今があります。
俊野選手
(バイクス)
僕は兄(達彦コーチ)がやっていたので、物心ついた時から庭にリングがある環境でした。かっこよさというよりは、兄弟で一緒にやる楽しい遊びが、ずっと続いてる感覚ですね。
俊野コーチ
(バイクス)
本当はサッカーをやりたかったんですよ。でも祖父がバスケをしていて、ミニバスへ連れて行かれました。(笑)6年生のお兄ちゃんたちが一緒に遊んでくれたのがうれしくて、そのまま続けることになりました。

 プロは「準備」で勝負する 

FEも過酷な現場で体力勝負の仕事です。体づくりで意識していることはありますか?

新田さん
(ミウラ)
私は今でも社会人チームで週3回練習して走っているので、バスケで培った体力がそのまま現場でのフットワークに活きているなと感じます。
吉村さん
(ミウラ)
僕はちょっと恥ずかしいんですけど、調子がいいときは筋トレしています。(笑)FEの現場って、とにかく暑くない現場はないくらい過酷なんです。だから、体力が不可欠です。

プロの選手たちは、長いシーズンを戦い抜くためにどんな準備をされているんでしょう?

俊野選手
(バイクス)
僕はキャリアも14年目。年齢的にも、急に新しいプレーを爆発させるというよりは、「毎試合、チームに必要とされている部分を100%で提供すること」が求められていると思っています。そのための一番のカギは、徹底的なルーティンと、ケガをしない体作りです。自分のリズムを崩さないことが、安定したパフォーマンスに直結します。

玉木選手
(バイクス)
僕の役割はゴール下で、自分より10cm以上大きくて、20kgも重いような外国人選手とフィジカルでバチバチに当たり合うこと。負けないための筋力作りはもちろん、当たり方やファウルの上手い使い方といった頭脳も含めて、自分の役割を全うするための準備をキープしています。

俊野コーチ
(バイクス)
思考を整理することに時間をかけています。夜、試合の映像をチェックして情報を頭に入れるんですが、夜はその場であれこれ考え込まない。一度寝て、次の日の朝起きた時に、パッと頭に残っているものだけを優先順位としてノートに書き出すんです。バスケは展開が速いので、一回リセットされた朝の頭に残っていないことは、コートの上では絶対に出てきません。朝出てきた「本質的な課題」に対して、「じゃあ今日の練習はこういうアプローチをしよう」と組み立てていく。今のビジネスサイド(ユースやスクールの経営マネジメント)の仕事でも、全く同じ考え方でやっています。

「24秒の逆算」は仕事にも生きる

一見全然違うように見えるバスケとFEの仕事ですが、何か共通点はありますか?

吉村さん
(ミウラ)
 制限時間の中で信頼を醸成していくところですね。FEの仕事では、お客様との約束事をきっちり守り、保守していくことが大事。そこをクリアしないと信頼は生まれないと思っています。これって、バスケの「制限時間から逆算してオフェンスとディフェンスを組み立てる」感覚と全く同じ。どちらの仕事でも、限られた時間の中で基本の守り(約束事)をきっちりやるからこそ、お客様やチームからの大きな信頼という「ゴール」に繋がっていくんだろうなと。
新田さん
(ミウラ)
私の部署は特定の顧客や売上目標を持たない代わりに、「この日のこの時間までにこの仕事を終わらせてほしい」と頼まれて現場に飛び込みます。だから、「今日1日で、この時間までにここまでを組み立てて終わらせる」という逆算の思考はバスケのタイムマネジメントと似ているなと日々頭を使いながら実感しています。

試合では一瞬の判断が求められます。どう磨いているのでしょうか。

俊野選手
(バイクス)
一番は“振り返り”だと思います。試合後に映像を見ながら、「あの場面ではどうすれば良かったか」を何度も確認する。それを繰り返すことで、次はもっと良い判断ができるようになります。
吉村さん
(ミウラ)
仕事でも同じです。良かったことも失敗したことも振り返る。中学生を指導するときも、『なぜそう考えたの?』と本人に問いかけます。その積み重ねがチームを強くしていくんです。

強いチームは「個」が強い

チームワークで大事にしていることはありますか?

俊野選手
(バイクス)
プロバスケ選手って、ある意味「個人事業主の集団」なんです。自分が試合に出て結果を残さなければ、次の年の契約はないかもしれないシビアな世界。根底ではみんな「自分が得点したい、プレータイムが欲しい」という個の欲を持っています。だからこそ、「この仲間のためなら、体を張って相手を止めるファウルをしてベンチに下がってもいい」と、深い信頼を持てているチームが、結果的に最後に勝ち上がる強豪になっていくんだと思います。
玉木選手
(バイクス)
 1年間ずっと一緒に生活して仕事をしているので、コート外での人間性も含めてお互いをリスペクトできないと、本当の意味でパスは繋がらないし信頼はできません。自分のやりたいことだけでなく、「今チームから、コーチから自分に何が求められているか」を意識して仕事をこなすようにしています。

新田さん
(ミウラ)
私たちの課も、メンバーが全国に散らばっていて、個々が自立して成果を上げるために動いている、ある意味ライバル同士のような部署です。でも、だからこそ月1回のミーティングで顔を合わせたときのコミュニケーションを一番大事にしていますし、普段の「個のがんばり」が良い刺激のパスになって、チームを動かしています
吉村さん
(ミウラ)
ミウラのFEも4人ほどのチームで動くことが多いですが、長年やっていると「あ、今ここが足りてないな、しんどそうだな」というのが俯瞰で見えてくる。誰かがイレギュラーな仕事で困っていたら、すっとその間に入ってカバーに回る。でもそれって、普段からコミュニケーションを取って、相手の人柄や特徴に加えて「何がしたいのか」を分かっているからこそ、できるんですよね。

チームとして同じ方向を向くための工夫はありますか。

俊野コーチ
(バイクス)
長期目標だけでは人の気持ちは続きません。だから、そこへ向かう短期目標を何度も設定します。小さな成功体験を積み重ねることで、チームは同じ方向へ進めるんです。
吉村さん
(ミウラ)
私たちも毎週月曜日に集まって、その週の予定を共有しています。誰が忙しいかをみんなが知っているから、自然と助け合えるんです。

信頼と結果は、日々の積み重ね

最後に、みなさんがお仕事やバスケを通じて、未来へ繋げていきたい「大切な想い」を教えてください。

俊野コーチ
(バイクス)
僕は今、ユースチームでプロを目指す子どもたちを指導していますが、例えば30秒のダッシュメニューを出したとき、ただ30秒をクリアするために走る子ではなく、「1番になって27秒で帰ってこよう」とする枠を超えた子を育てたい。その思考と努力の基準は、たとえ将来プロにならなかったとしても、社会に出て仕事をする上で必ず一生モノの武器になると思います。
玉木選手
(バイクス)
どんなに体調が悪くても、シュートが入らない日でも、自分の感情に振り回されずに「最低限、自分の仕事をきっちりこなして帰ってくる」プロの姿勢を、これからもコートの上で見せ続けたいです。
俊野選手
(バイクス)
自分のルーティンやコンディションを高い位置で維持し、ベテランとして常にコンスタントなパフォーマンスをチームに提供し続ける背中を、若い世代にも繋いでいきたいです。

新田さん
(ミウラ)
私はとにかく「人から信頼される存在でいること」をモットーにしています。仕事なら「報連相を徹底して、疑われるような行動をしない」こと。バスケなら「こいつにパスを回しても外すだろ」と思われたらボールは来ないので(笑)、ディフェンスでもプレースタイルでも、約束事を守って「任せて」と言えるだけの信頼を、一つずつ積み重ねていきたいです。
吉村さん
(ミウラ)
仕事でも私生活でも「やってもらったことに対して、ちゃんと『ありがとう』とお礼を言うこと」を何より大切にしています。実は結婚したての頃、土日も仕事やバスケの遠征に熱中しすぎて家族を放置してしまった苦い経験がありまして。その時に、当たり前と思わずに「ありがとう」を言葉にして伝えることで、コミュニケーションがうまく回り出したんです。挨拶も、信頼も、家庭も、まずは相手への感謝を真面目に言葉にすることから始まる。子どもたちにも、職場の仲間にも、そこを一番に伝えていきたいですね。

【あとがき】

今回の対談を通して見えてきたのは、プロフェッショナルとは、自分の役割に責任を持ち、準備を積み重ね、仲間を信頼できる人だということ。

コートでも現場でも、本当に強いチームは、一人ひとりが自立した「強い個」の集まりでした。そして、その個と個をつないでいたのは、技術以上に、日々積み重ねられた信頼だったのです。

貴重なお話をありがとうございました!

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