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ミウラとヒト

ミウラ×今治造船 「現場のために!」会社を超えて実現した作業用ユニフォーム開発の舞台裏

製造現場で働く人たちに、もっと安全で、もっと快適な作業服を届けたい。そんな思いから始まった、三浦マニファクチャリングの新しい作業服づくり。そのきっかけとなったのが、今治造船株式会社(以下、今治造船)が約2年をかけて開発した作業服でした。今回の記事では、両社のメンバーに、作業服開発の舞台裏を振り返ってもらいました。

この方にお話を伺いました

くろかわ ゆうじ黒川 裕司

KUROKAWA Yuji

今治造船株式会社

人事総務本部 人事企画グループ グループ長、勤労グループ 丸亀勤労チーム チーム長を兼務。作業服刷新プロジェクトを中心となって推進し、約2年にわたる開発をリードした。現在は採用・教育をはじめ、人事企画に幅広く携わる。

黒川 裕司

むかい りょうた向井 亮太

MUKAI Ryota

今治造船株式会社

丸亀工場 船殻グループ 組立チーム 係長。造船現場に近い立場から実際の作業環境や現場の声を踏まえ、安全性と働きやすさを追求した作業服づくりに携わった。

向井 亮太

いそだ しゅんすけ磯田 隼佑

ISODA Shunsuke

今治造船株式会社

丸亀事業本部 今治造船グループ 設計統括室 設計統括チーム 係長。設計部門に所属しながら、生地や仕様の検討などにも携わった。

磯田 隼佑

ながお ゆうき長尾 祐樹

NAGAO Yuki

株式会社三浦マニファクチャリング

2006年入社。製造現場でライン組立や製造支援などを経験し、現在は人材開発部門で採用や社員教育に携わる。今回の作業服刷新で、ミウラ仕様のつなぎ開発を担当。

長尾 祐樹

1. 始まりは、今治造船の作業服の刷新

まずは、このプロジェクトが始まったきっかけから教えてください。

長尾さん
(ミウラ)
三浦工業と今治造船さんは、もともと船舶用製品を通じてお付き合いのある関係です。当時の会長が今治造船の作業服リニューアルについて聞き、溶接現場で使う作業服だから、ミウラの参考になるんじゃないかと。2025年1月に今治造船でユニフォームの制作を担当された皆さんをご紹介いただきました。

今治造船では、どのように作業服を開発されたのでしょうか。

黒川さん
(今治造船)
今治造船では、それまで約30年間、作業服を大きく変えていませんでした。でも、ものづくりの国・日本で、30年の間に素材や技術が進化していないはずはない。「作業服だけが30年前と同じということはないだろう」と思ったのがきっかけでした。そこから、生地やデザイン、暑さ対策、安全性などを一つずつ検証しながら、約2年かけて新しい作業服をつくりました。また、作業服の管理や修理など、運用面まで含めて仕組みを整えていきました。

そのノウハウを、三浦マニファクチャリングに共有されたんですね。

黒川さん
(今治造船)
はい。ただ、最初に長尾さんたちにお話しした時は、まだ私たち自身も新しい作業服を正式導入する前でした。完成品をお見せするというより、仕様書や試験データ、ここまで積み上げてきた考え方をお伝えするような段階でしたね。
他社にこうした開発ノウハウを提供するというのは初めての経験でした。ただ、ミウラさんとは長年のお付き合いがあり、深い信頼関係を築かせていただいています。会社としても「ミウラさんのお役に立てるならぜひ協力しよう」と後押しがありましたので、私たちの知見を惜しみなく提供させていただきました。
向井さん
(今治造船)
最初は「どこまで出していいんだろう」という不安もありました。でも、会社から背中を押してもらえたので、そこからはもう、自慢するしかないなと。2年間頑張ってきた軌跡を、ひたすら長尾さんたちに見てもらいました。

2. 「そのままでは使えない」。現場の声から始まったミウラ仕様

長尾さんは、このプロジェクトを任されたとき、どのように感じましたか。

長尾さん
(ミウラ)
正直、「社内で絶対揉めるな」と思いました。(笑)
今治造船さんの作業服は、上下が分かれたセパレートタイプです。一方、ミウラの製造現場には、セパレートとつなぎの両方があります。当初は、管理のしやすさやコスト面も考えて、セパレートに一本化できないかという話もありました。
でも、長年つなぎを着ている人にとっては、単なる作業服ではなく“ユニフォーム”なんですよね。一着で済むし、少しルーズに着るとかっこいい。それぞれに着こなしやポリシーもあるので、それがなくなるとなれば、簡単には納得してもらえないだろうなと思いました。

最初は、今治造船の作業服をベースに試作品をつくったんですよね。

長尾さん
(ミウラ)
はい。今治造船さんの仕様をもとに、色だけミウラ仕様に変えたものをつくって、現場で約1か月テストしてもらいました。
ところが、結論から言うと……大不評だったんです。(笑)

大不評! なぜですか?

長尾さん
(ミウラ)
実は、テストしてもらった作業服が悪かったからではなくて、良すぎたんです。(笑)
今治造船さんの現場は、上から溶接の火花を浴びるような作業も多く、防護性が非常に重要です。そのため、作業服もかなり高いレベルの安全性を備えていました。
一方、作業環境が異なるミウラに同じ仕様をそのまま取り入れると、少しオーバースペックでした。
磯田さん
(今治造船)
作業環境は違ったとしても、同じ課題感や思いはありますよね。
黒川さん
(今治造船)
そうそう。「現場で作業をしている皆さんのために」「現場ファースト」という作業者の方々へのリスペクトは、長尾さんも含めて僕たち全員の根本にあるものです。

そこから、改めて現場の声を集めたんですね。

長尾さん
(ミウラ)
はい。試作品をテストした人たちから意見を集めました。その中で多かったのが、「やっぱりつなぎがいい」という声でした。
それなら、つなぎならではの良さをなくさず、安全で快適なものをつくろうと方向性を決めました。セパレートのように市販の空調服を使えない代わりに、空調ファンを取り付けられるつなぎをつくることにしました。

3. 安全に、快適に。現場に合わせてつくり込む

ミウラ仕様のつなぎでは、どんなところにこだわったのでしょうか。

長尾さん
(ミウラ)
難燃性の生地を使い、溶接現場に必要な安全性は確保しながらも、より快適に着られる方向へ舵を切りました。これまでのつなぎよりかなり薄くしています。
磯田さん
(今治造船)
現場に合わせて変えることが大事です。私たちも、どこに火花が当たりやすいか、どこが傷みやすいかを見ながら、自分たちの作業環境に合わせて仕様を決めています。

そして、空調ファンも取り付けられるようにしたんですね。

長尾さん
(ミウラ)
はい。ファンから入った空気が首元へ抜けるようにし、しゃがんだ時にも動きやすいよう腰まわりを工夫しています。
それから、現場のみんなが使い慣れているペン差しも残しました。機能を新しくするだけではなくて、今までのつなぎで大事にしてきたものも残したいという思いがありました。

実際に着てもらって、反応はいかがですか。

長尾さん
(ミウラ)
今まさに声を集めているところです。
生地を薄くして涼しくすること、燃え広がりにくくすること。その二つは実現できました。ただ、空調ファンの風の入り方など、実際に夏に着て初めて分かる課題も出ています。みんなが着てくれたら完成、という感覚は全然なくて。次はどこを改良しようかと、すでに考えているところです。

4. 会社を越えて、つながるということ

皆さん本当に仲がいいですよね。プロジェクトは、どんなふうに進めていったのでしょうか。

長尾さん
(ミウラ)
最初は、オンラインでやり取りをしながら、今治造船さんからいただいたデータをもとに、ミウラの中でトライアルを進めていく形でした。僕は現場の声を集めたり、デザイン会社さんと相談したりして、その経過を今治造船さんにも共有していました。
向井さん
(今治造船)
今年の3月ごろに松山の本社に初めて伺わせていただき、実はそこが初対面でした。僕は松山出身ということもあって、昔から三浦工業さんのことは知っていたので、現場を見せていただけることに正直かなりワクワクしていました。実際にお邪魔してみたら、本当に楽しくて。(笑)

今回のプロジェクトを振り返って、それぞれどんなことを感じていますか。

向井さん
(今治造船)
結果として作業服が切り替わったことはもちろんよかったのですが、会社同士で情報を共有することで、お互いの社員や現場にも刺激が生まれると思っています。それが作業服だけでなく、製造業全体の環境改善にも広がっていけばいいですね。
磯田さん
(今治造船)
最初は社内の活動だと思っていたものが、気づけば社外にも広がっていました。いろいろな人と出会って、違う会社や現場を見られたことは、僕にとって大きな出来事でした。おかげで、自分の会社を新しい目線で見られるようになった気がします。これからも、お互いにいい刺激をもらいながら、つながっていけたらと思っています。

黒川さん
(今治造船)
僕は、このプロジェクトを始めた時から、今治造船の知見を他社に共有し、そこで生まれたものがまたこちらにも返ってくる、そんな循環ができたらいいなと思っていました。今回、ミウラさんとの取り組みで、それが一つ形になったことが嬉しいです。
実は今治造船の現場でも、つなぎが欲しいという声があります。今度はミウラさんのつなぎを参考に、今治造船仕様へアレンジできるかもしれません。
長尾さん
(ミウラ)
最初は会社のトップ同士のつながりから始まった話でしたが、今では担当者同士ですっかり打ち解けて、遠慮なく連絡を取り合える仲になりました。ここからまた、いろいろなところでつながっていけたらと思っています。
黒川さん
(今治造船)
そこはぜひ、よろしくお願いします。(笑)作業服に限らず、これからもいろいろ情報交換していきたいですね。

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