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ミウラとヒト

経験を重ねてもなお「おもしろい!」——匠が語るものづくりの魅力について

ミウラグループの製造会社「株式会社三浦マニファクチャリング(以下:MFG)」で働く約600名の社員の中で、わずか3人しか取得していない『上級組立技能資格』という認定資格があります。これはミウラグループ独自の資格で、国家資格ではないものの”超“がつくほどの難関資格です。受験が始まった2019年には合格者ゼロ。毎年5〜6人が受験しますが、合格するのは1人いるかいないかという狭き門です。今回の記事では、この上級組立技能資格を持つ社員2名を「匠」と呼び、普段のお仕事やものづくりへの思い、そしてお二人が考える「匠の姿」についてお話を伺いました。

この方にお話を伺いました

こいけ あつし
小池 篤

KOIKE Atsushi

小型生産事業部 小型生産部 FM組立課
メディカル組立1係/エキスパート
1996年入社

ミウラ製品専属の設備会社を営んでいた父親に憧れ、高校を卒業後MFGに就職。
簡易ボイラ係→ライン組立係→セル組立係→特注工事課→食機組立係→製造支援課→メディカル組立係と、さまざまな部署を経験。ミウラグループが主催する組立コンクールにおいては優勝経験も。
趣味は、娘さんが所属するバスケットボールチームの試合を夫婦で観戦すること。

Profile Picture

たむら りょう
田村 良

TAMURA Ryo

小型生産事業部 小型生産部 FM組立課
食機組立係/アドバイザー
2004年入社

結婚を機に、全国転勤の多い前職から三浦NP(のちにMFGと合併)に転職。
上級組立技能資格の合格者第一号で、現場専門職で唯一の医療機器製造業責任技術者としても活躍。
プライベートでは、3人のお子さんの父親で、料理に掃除に家事全般なんでもこなす家族思いの姿も。

Profile Picture

聞き手

ながお ゆうき
長尾 祐樹

NAGAO Yuki

総務部 総務課
総務係/係長 ・ 教育係/係長 兼務
2006年入社

製菓の専門学校を卒業後、製菓店で働く。当時、ミウラグループの野球チーム(Zクラブ*1)に参加していたことがきっかけで、製造業に憧れMFGに転職。
入社後、ライン組立係・メディカル組立係・製造支援課を経験し、小池さん・田村さんとのつながりは深い。
特技は人と繋がること。趣味は二郎系ラーメンを食べること。

Profile Picture

*1)Zクラブ:ミウラグループ内で共通の趣味を持つ仲間が集まる社内クラブ活動。野球・サッカー・バスケットボール・軽音楽・ツーリングなど幅広いジャンルのクラブがあり、定期的に活動を行っている。

※登場人物の所属は2025年3月の取材時点です。


オーダーメイドの製品を組み立てる

長尾さん

今回のミウラPlusの記事は、「匠の技」をテーマに、上級組立技能資格を持つ小池さんと田村さんを「匠」としてご紹介します。

私は、インタビュアーとしてお話を伺います。
普段から仲良くさせてもらっているお二人ですが、これまでに聞いたことのある話も、初めて聞く話も含めて、ざっくばらんにお話しいただけたらと思います。よろしくお願いします!

まずは、お二人の普段のお仕事について教えてください。

作業をする小池さん 組立作業中は真剣そのもの
小池さん

私は、メディカル組立係として洗浄器や滅菌器などの医療機器を組み立てています。

お客様の要望に合わせたオーダーメイド製品が多く、「セル組立」といって一人で最初から最後まで組み立てるのが特徴です。
ミウラの設計者が作図した完成形の図面を見ながら組み立てていくのですが、標準品のようにラインで流れ作業するのとは違い、組立の順番や流れが全て現場に任されています。最終的に図面どおりのものが完成していれば良いので、作業者によって合理的だと判断する方法や手順は異なります。

日々「安全・正確・迅速」を意識してものづくりを行っていますが、組立方法には大きく裁量を持たせてもらっていますね。

複雑に交差する配管 水平垂直、美しく配置されている
小池さん

製造には「現合(げんごう)」という言葉があります。これは「現場で合わせてください」という意味です。

…あ。決して無責任に丸投げされているとかじゃないんですよ。
オーダーメイドの場合は設計が意図するとおりにならないこともあるので、「現場の判断に任せます」というポジティブな信頼関係がベースにあります。平面の図面をもとに立体の製品を頭の中でイメージして組み立てるので、知識や経験をもとに判断しながらの作業になります。

だからこそ、自分の中に「引き出し」がたくさん必要になりますね。

設計図には完成形が記されており、そこに至るまでの経緯などは組立作業者の知識と経験に委ねられる

最後の砦としての役割

田村さん

私の役割は、MFGで製造された医療機器がマニュアル等に記載された要求事項を満たしているか確認し、最終的な出荷の可否を判断することです。

医療機器の製造会社は、その製造許可を維持する要件として『医療機器製造業責任技術者(以下、責任技術者)』という資格者を配置するよう厚労省令で義務付けられているんですが、現在、私もその責任技術者の一人として任命されています。

1mmの差も見逃さない田村さんの厳しいチェック
長尾さん

責任技術者は国家資格ではありませんが、長年の実務経験があることや、医薬品医療機器総合機構などが主催する研修を受け試験に合格していることなど、さまざまな要件があり、資格の取得には一定の知識と経験が必要です。

MFGでは、歴代役職者が責任技術者を務めてきました。
そのくらい責任の重い仕事ですが、田村さんは現場の専門職として初めてこの役割を担うことになったんですよね。

その点についてどのように感じていますか?

田村さん

任されたというのは、素直に嬉しかったですね。
信用されているんだなと。

ただ、責任技術者というのは前工程の人を信じながら疑うという厳しい立場なんですよ。
だからこそ、「不良品は出してはいけない」という使命感を持って取り組んでいます。

最後の砦」という感覚かな。

厳しいチェックをクリアして、ミウラの製品は出荷される

超難関資格『上級組立技能資格』とは?

長尾さん

では、お二人が持っている上級組立技能資格について教えてください。

これは、ミウラグループ独自の認定資格ですが、MFG内でもわずか3人しか認定されていない、非常に難易度の高い資格です。

小池さん

上級組立技能資格にチャレンジするには、いくつかの条件をクリアしなくてはいけません。
中級組立技能資格の取得はもちろんですが、配電盤に関する社内資格の取得など、組立以外の知識や技術の習得が必須となっています。

田村さん

試験は4〜5時間の実技で、個室に一人きりで課題を組み立てます。
資格試験は、組立コンクール*2と違って誰かに見られているプレッシャーがない代わりに、独特の緊張感がありますよ。

*2)組立コンクール:ミウラグループが主催する『ミウラグループ技能大会』の種目のひとつ。年に1度、溶接・電気配線・組立の3種目が実施される。製造グループ会社だけでなく協力会社からも参加があり、社内外多くの関係者が見学する公開形式で行われる。

長尾さん

先ほども触れましたが、組立技能資格はミウラオリジナルの認定資格です。

上級の資格は中級組立技能資格から約10年を経て誕生したのですが、2019年度の初回試験では、なんと合格者ゼロという結果…。
そのときは、お二人も受けられていましたよね。

田村さん

自信はあったんですけどね。
その分、不合格の結果を聞いたときはショックでした。

試験は年に1回しかないので…その後は、皆で組み立て方を相談しながら必死で対策しました。
翌年に合格したときはとても嬉しかったです。

長尾さん

ちなみにこの試験は『組立分科会』が管理していて、寸法どおり収まっているかはもちろん、組み立てられた配管を審査員が全部バラすなどして、隅々まで細かく採点しています。

小池さん

私は4年目で合格しました。

1年目に受験したときは、ベテラン4人で受けて、全員不合格。翌年は、寸法が課題の指定に1mm収まっていなかったことで不合格。寸法が基準に収まらないと、ほかがどうであれ不合格確定になるので…トラウマになりました。寸法を測る手順や工具を模索して、作業時間が倍になった時期もありました。

試験は毎回全身全霊で挑みますので、終わった後、灰になります(笑)。

長尾さん

大ベテランでも不合格になってしまうことや、たった1mmの誤差で明暗を分けてしまうことが、上級組立技能資格の難しさを物語っていますよね。

ただ、諦めずにチャレンジし続けたことが次のステップアップにつながり、お二人が「匠」へと近づいたように感じます。

そのあたりはどうですか?

小池さん

そうですね。
ベテランと呼ばれるようになってからも、こういう資格の取得に挑戦できる機会があることはやりがいになります。

他の職種…例えば溶接や電気などには国家資格がありますが、組立にはありません。
この上級組立技能資格ができたことで、自分たちの仕事が分かりやすく評価される、そしてその対価として手当がつくというのは、ある意味目標にもなります。

田村さん

たしかに。

でも私は、自分の力を試す場として、試験が純粋におもしろかったっていうのもありますよ(笑)。


匠が考える、「匠の技」とは?

長尾さん

「匠」というキーワードでお話を伺っていますが、お二人は匠についてどのように考えていますか?

小池さん

匠と呼ばれてもピンと来ないんですけどね。

「臨機応変に対応できるスキル」や「柔軟な発想をもとに具現化できる力量」「センス」「ものづくりを楽しむ気持ち」とかいろいろあると思いますが、それらの積み重ねが匠なのかなと思います。

長尾さん

小池さん、謙遜しますね。
でもやはり、上級組立技能資格に辿り着いたことが「匠」のひとつの目安かもしれませんね。

田村さんは、匠という言葉をどんな風に感じているんですか?

田村さん

経験ですよ。
知識と経験なんですけど、結局はたくさん失敗しているからとも言えます。

長尾さん

失敗や成長の積み重ねが匠の原点なんですね。

ちなみに、お互いのことは、どのように見ているんですか?

小池さん

私は先ほど、自分が「匠」と呼ばれてもピンとこないと言いましたが、田村さんが「匠」と呼ばれることには全く違和感がないです。

私が配管をどう組んでいこうか悩んだとき、相談相手として真っ先に思い浮かぶのは田村さんです。
FM(食品・医療機器)*3 の経歴も長くて、知識や技量だけじゃなく、人脈も豊富なんですよね。人を惹きつける魅力が半端なくある人です。

そんな田村さんは、周りへの指示が異常なほど的確なんです。
自分が楽をしたいからって風にも映るんですけど。
…あ、これは言っちゃマズかったですかね(笑)。

*3) FM(食品・医療機器):Food・Medicalの頭文字から

田村さん

否定はしないけどね。

長尾さん

(笑)
ふたり、ホントに仲が良いですよね。

田村さん

私からすると、いろんな現場を見てきた小池さんの経験値は真似できないですよ。あとは集中力。没頭して作業をし続けられるフィジカル面に関しては同年代として尊敬しています。
作業スピードも速いし、作業習得も早い。

しかも、どんな天候の日でも片道10キロを自転車で通勤している「フィジカルモンスター」です(笑)。
これって本当にすごいことですよ。

ちなみに、小池さんのガソリンはカフェオレです!

長尾さん

そうそう。
私と田村さんの間では、小池さんは間違いなくフィジカルモンスターですよ(笑)。

しかも、MFGの社員みんなが憧れる「匠」なのに、超甘党でカフェオレが欠かせないというギャップがまた魅力なんですよね!

インタビュー中に空っぽになった小池さんのカフェオレ 集中したいときほど欠かせないそう
長尾さん

才能とはまた違うんですけど、組立をしていると「センスに任せるよ」みたいな感じで「センス」という言葉をよく使ったりします。

昔は見かけとか表面的なことかと思っていたのですが、今になれば、これこそ「経験に任せるよ」って意味なんだなって思いますよね。

田村さん

そうそう、知識とかね。

経験とかスキルとか、全部ひっくるめて「センスに任せるよ」って使っていて。センスって言葉に集約されていますよね。

長尾さん

匠の技は知識・経験・スキルがあってこそなんですね。

これだけ長い間たくさんの経験を積んでこられたお二人ですが、自分の成長を感じた瞬間やようやくここまで辿り着いたなみたいなターニングポイントってありますか?


二人の匠、目標としたのは同じ人!?

小池さん

私の場合は、父の背中に憧れてミウラグループに入社しました。

父は自営で三浦工業専属の設備会社をしていました。
はじめはボイラを据え付ける仕事*4をしていたのですが、やがてミウラのほうから「FM(食品・医療機器)の仕事をしませんか?」と声掛けがあり、ボイラに続いてFMでもキャリアを築いていきました。

私も、ボイラからFMへと、偶然にも父と同じキャリアを重ねる中で、「匠」と呼ばれるようになったことは、父の背中を近くに感じられるというか成長したなと思いますね。
技術はまだまだ及びませんけど。

*4) ボイラの据付:お客様先など所定の建物や施設に、ボイラを設置すること

田村さん

私は、試作機を任されたときですね。あとはトラブル解決に呼ばれるときとか。誰かに頼られるときとか…。

任されるというのはやっぱり嬉しいですよね。

長尾さん

確かに、新しい機器を開発し試作するとなったとき、小池さんや田村さんのような熟練者は設計担当から直々に指名されますよね。

ちなみに、小池さんはお父さんを目標にしているとのことですが、田村さんにも目標としている匠はいるんですか?

田村さん

実は私も小池さんのお父さんです。

小池さんと会う前から、お父さんとは一緒に仕事をする機会が多くて、さまざまなノウハウを教えてもらいました。
お客さんのところへ直接伺って、製品を据え付け、最後まで見届けるので、ごまかしがきかないじゃないですか。

小池さんのお父さんはまさに「職人」という感じで、厳しかったですよ。

小池さん

私は父から「ミウラの製造グループに、仕事のできる人がいる」と田村さんの評判を聞いていて。父が認める存在なので、ずっと気になっていました。

ただ、できる人=真面目そうな人、堅そうな人、みたいな感じでイメージが膨らみすぎていたので…。
実際に会ったときの印象は、「本当に、この人が?」という感じでした。

どんな印象だったのかは、ここでは言えません!(笑)

長尾さん

言えませんって、見た目のギャップを言ってますよね!?(笑)


組立の現場から、未来に向けたメッセージ

長尾さん

最後に、おふたりからそれぞれ、メッセージをいただけますか?

小池さん

まずはお客様へ。
ミウラの製品は、設計をはじめとする多くのプロフェッショナルの力が結集した成果です。
安心して使っていただければと思います。


そして、後輩やミウラに興味を持っている人たちに。
目標を持つことで、そこまでの道筋が見えやすくなります。
さまざまな材料が組み合わさってひとつの製品になる光景は、製造現場ならではの醍醐味です。
ぜひ、頑張ってほしいです。

田村さん

良い製品が出荷できるように自信を持って仕事をしています。
だから後輩の皆さんには、分からないことがあれば遠慮なく聞いてほしいですね。

聞くことでコミュニケーションが生まれ、人と人の繋がりができます。これはどんな仕事にも同じで、大切なことだと思います。
自分のスキルアップのために、先輩や熟練者を上手く頼ってください。

何年働いていても思いますが、やっぱりものづくりは楽しいですよ。


あとがき

2025年春、匠のお一人である田村さんが舶用組立係に異動となりました。
組織のなかで異動はつきものとはいえ、田村さんがFMの現場で積み重ねてこられたキャリアを思うと、「これからもFM組立課で活躍してもらった方がいいのでは?」という気持ちが芽生えたのも、正直否めないところです。
しかし、田村さんが異動することで、他の方が田村さんの「匠の技」を目の当たりにできます。こうしてミウラ全体に「匠の技」が循環され、新たな匠の誕生につながっていく…。そう考えると、今回の異動は、ミウラの技術力をさらに底上げするための大きな一歩と捉えることもできそうです。

今回の取材を通じて、「匠」とは技術だけではない、仕事へ取り組む姿勢だと感じました。
経験や知識があるだけではなく、妥協せず、さらに高みを目指して自己研鑽できる方が匠と呼ばれる存在になっていくのだろうと思います。
そして、仕事自体を楽しむこと。
経験豊富な匠でありながら、お二人のものづくりを楽しむ少年のような眼差しが印象的でした。


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ぜひ覗いてみてくださいね。

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