『図面は設計者からのラブレター』!! ~調達部が描くものづくりの未来像とは?!~
調達の仕事に長年携わってきた3人の社員×見ル野さんの座談会をお届けします。
調達部ってどんなことをしているの? 彼らが思い描くミウラの製造とは?
そして、サプライヤー各社の一番近くにいるからこそ伝えておきたい、サプライヤーへの本音、そして設計者への願い…
ミウラと言えば「ものづくり」。
ちょこっと手を止めて、製造やものづくりについて考えてみませんか?
もくじ
この方にお話を伺いました
つぼた よしたみ
坪田 吉民
調達部 部長代理
プロフィール
愛媛県西予市宇和町出身。
機械エンジニアの道を目指して地元製造会社を選び、1983年ミウラへ入社。
ボイラ、アクア、食品機械、特機、舶用…など、技術部門のほとんどを経験しており、海外(カナダ)での駐在経験もある。2011年~物流部、2012年~調達部、現在に至る。
健康のため、ジムトレーニングと毎日のウォーキングを10年以上継続。歴史小説が好きで、余暇は本を読むなどして過ごす。また、休日に写経もしている…らしい!
もちぬし ゆうじ
持主 裕司
調達部 調達2課 課長
プロフィール
愛媛県四国中央市出身。
2001年入社。愛媛で生まれ、愛媛で育ち、学生時代も愛媛で過ごす。「就職後こそは県外へ!」という強い希望を持ってミウラに入ったが、配属先は松山本社(当時の資材部調達課)。2008年~生産品質の仕事に携わり、そして3年後に再び調達へ籍を戻し現在に至る。結局愛媛から一度も出たことがないと漏らしているが、のべ20年の調達大ベテラン。
趣味は釣り。また休日は、ソフトボールの指導者として小学生と汗を流している。
まつぞえ のりひと
松添 記仁
生産品質部 生産品質2課 課長
プロフィール
長崎県西彼杵郡出身。
2003年入社。学生の頃からものづくりを仕事にしたいと思っていたところ、大学の教授にミウラの入社を勧められる。入社後に配属された調達部は19年間在籍。2022年~生産品質部に異動し、現在に至る。
趣味はゴルフ。休日は練習やラウンドにいそしむ。義父(奥様のお父さん)の勧めをきっかけにはじめたため正々堂々とゴルフができると話す。 特技は痛飲(=大いにお酒を飲むこと)。晩酌の量が尋常でないと、とある部署で話題になったとか…?
聞き手
みるの えいじ
見ル野 栄司
漫画家
プロフィール
静岡県島田市出身。
半導体製造装置やアミューズメントゲーム機などの設計開発の会社に9年勤務した後に、漫画家としてデビュー。代表作に、理工系ものづくりの人々の姿を描いたコミックエッセイ「シブすぎ技術に男泣き!」などがある。
その他、各地の工場・研究所などを訪問するルポ漫画や、さまざまな企業のPR漫画など、元エンジニアという経歴を活かし、広く活躍している。
謎部署!?調達部って何してんの?
改めてですが、調達部さんがなにをしている部署なのか教えていただけますか?
調達部というのは、製品を構成する部品手配の役割です。
なかでも、設計が描いた図面品を取り扱います。
より良いものをより安く仕入れるため、サプライヤーの選定から価格交渉、納期調整まで、顧客満足の実現に日々努めています。
社内でよく、資材と調達ってどう違うんですか?って聞かれるんですけど、購買という意味ではどちらも同じです。
シンプルに言うと、調達は設計者が作成した図面品を手配、一方資材はメーカーや商社から既製品・規格品を手配という違いがあります。
なるほど!
いわゆる加工部品などのオーダーメイドの部品を製作する加工業者が調達サプライヤーさんってわけだ。
そうです。
資材は、電気部品やバルブなどのカタログ品もそうなんですが、主には加工前の鋼材や消耗品などの仕入れをしています。
ちなみに、設計から調達部宛に出てくる図面は、これまで実績のない「初品」と言われる品目だけでも、月に1,000~1,500件とかなりの数になります。
月に1,500件とは!!ものすごい数の発注をしているんですね。
では、松添さんの生産品質部とは?
私の部署は、物品の受入検査や品質管理を任されています。
ミウラの指示する「図面通り」のモノが入ってこなかったときには、なにがおかしいか確認したり、修正させたり、いわゆるクレーム対応を行います。
ですが、そういったミスが起こらないよう、サプライヤーの品質管理体制構築や、改善支援をするのも私たちの仕事です。
調達部と生産品質部の仕事は、密接に関わっているのですね!
見ル野CHECK!!
調達業務とは、加工業者さんへ右から左に図面を送るのではなく、価格や納期や品質のこともやりとりしなくてはならない。想像しただけで、かなりの仕事量だし、それなりの総合的な知識と経験も必要だ。それにコミュ力も。時間管理ができないといけないので効率を求められるに違いない。
サプライヤーってどんな存在?
そして、トップサプライヤーって?
先ほどから出ているサプライヤーという言葉…
ひと昔前だと、下請けとか言ってたのが今はサプライヤーと呼びますね。
ミウラさんにとってサプライヤーの存在とは何ですか?
ミウラグループ製造会社とともに無くてはならない存在です。車の両輪のように、常に我々のものづくりの支えとなっています。
現在、調達部の取引先は150社ほどありますが、その中でも特に技術力があり信頼のおけるサプライヤーを、トップサプライヤーと位置づけています。
ト…トップサプライヤー?
多くのサプライヤーの中からトップサプライヤーを認定しているという理由は?
かつては手広くサプライヤーを開拓していた時期もあったのですが、2008年に高橋さん(現会長)が発表した「品質に勝るコストダウンはない」というビジョンを機に、サプライヤーの技術・品質・対応力の底上げをする仕組みを作ったのが始まりです。
トップサプライヤー制度は、
QCDF(品質 (Quality)、価格 (Cost)、納期(Delivery)、柔軟性(Flexibility)の観点で、ポイント制の基準を設けて活動しています。
現在は8社をトップサプライヤーに認定し、調達品発注全体の6~7割を担っていただいています。
ポイント制…プレッシャーですね。
まぁ、たしかにQCDFのポイントだけにこだわると、現場が疲弊してしまってもいけないので。
長い運用の中、ミウラへの寄与や貢献度を測るなど、見直しもしているのが現状です。
明確な数値化をして、厳しくもあり、良いものは称えるという制度があるからこそ本当に質の高い生産がされるのです。
サプライヤーとのいい関係を維持するために、定期的にPC交流会というのも実施しています。
お互いが納得したものづくりを目指すため、設計・購買・サプライヤーが分け隔てなく話し合う場なんです。
こういった取り組みの結果、品質精度も上がり、クレームもグンと減りました。
補足しておくと、PC交流会の語源はProcess Change、「生産の仕方を変えましょう!」です。
工数ダウンやコストダウンには、サプライヤー、つまり製造者のことを意識した設計・生産が大切なんです。
こういった数値化した明確なルールで運営している制度は、ISOの品質監査で、いつも賞賛事項として評価されるんですよ。
良いコンサル例として売れそうですね(笑)。
また、近年の脱炭素化に向けた活動にもつなげていく必要があり、例えば、製造方法を見直すことで溶接の火花を散らす時間を減らすことができる、その結果 工場のCO2の発生量が抑制ができる、といったような、Scope3の活動にまで展開しています。
※
Scope1:事業者自らによるGHGの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
Scope2:他社から供給されたエネルギー(電気、熱、蒸気など)の使用に伴うGHGの間接排出Scope3:Scope1、Scope2以外のGHGの間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)
気候変動への取り組み|サステナビリティ|三浦工業 (miuraz.co.jp)
見ル野CHECK!!
ビジネスパートナーとして末長く共存するためには、お互いに厳しくもストイックな仕事を共有するということ。これから成長していくためにはもっと進化しなくてはならない。
そのためには、今、面倒で目をそむけていることも潰していかなくてはならない。だからこそもっと距離を縮めて協力しあっていこう…そういった愛を感じる。
サプライヤー取材を同行して感じたこと
持主さんと松添さんには、サプライヤーさん2社の取材に同行してもらいました。両社ともミウラの製品を支える欠かせない存在だと感じましたが、おふたりはどう感じましたか?
彼らには、そこにしかないノウハウがたくさんあります。他社だと同じ形が作れても、性能が出ない、要求を満たさない…など、いろいろあるんですよ。
三共機工様がいい例ですが、ミウラの幅広い事業部の部品製造をやっているので、ほぼ我が社だけで満たされてしまっている。あれだけの技術、本当は勿体ないと思いますよ。
三共機工様取材漫画はこちら
常識も覆す究極の技術、ここにあり!
サプライヤー取材 vol.2 ~三共機工株式会社様~
ミウラplus[ミウラプラス] (miuraplus.com)
ミウラ色に染まってしまうのではなく、もっと高いレベルの会社と関係を持って、冒険をしてほしいです。
「井の中の蛙」にならないようにしたいですよね。調達もサプライヤーもお互いに。
そして「大海」を見てきたサプライヤーに、「やっぱりミウラと付き合っていきたい」と言われたいです。
たしかに、あれだけの素晴らしい技術をミウラさんが独占しているというのは、もしかしたらとんでもないことなのかもしれないですね。
我々ミウラグループの工場もそうですが、ものづくりはオートメーション化されてきています。
ノウハウより、誰がやっても同じものができることが重視されつつあります。
これまでサプライヤーには、独自のノウハウというところを求めてきましたので、ものづくりとしては非常に厳しい時代がやってくるんだろうな、というのは懸念しています。
その点、門田鉄工様は社長から専務に世代交代し、新しい動きをしようとしてますね。
門田鉄工様取材漫画はこちら
彼らの技術力を知らずして、ミウラの製造は語れない!
サプライヤー取材 vol.1 ~株式会社門田鉄工様~
ミウラplus[ミウラプラス] (miuraplus.com)
「共存共栄」という考えも大切ですが、将来に向けた野望を常に持っていてほしいです。
この先もずっと、我々購買チームが「やはりこの会社に発注したい!」「この会社と継続した取引をしたい!」と思える魅力的な会社でいてほしいです。
一方で、ミウラが足を引っ張っている部分を感じることもあります。
全面協力体制にあるサプライヤーに甘えてしまっている。
設計をはじめとした我々社員も気を引き締めるべきだと…
持ちつ持たれつのWin-Win関係は素敵ですが、お互いに成長し続けるためには、どちらもが依存しすぎないって大事なんですね。
見ル野CHECK!!
サプライヤーにも未来を意識してほしいのが伝わる。
彼らは、ミウラだけではない事業展開を期待している。その冒険によって世界が開け、互いに新たな道が見えてくるのかもしれない。挑戦すること、恐れず攻めていくことが負けないことであり、進化というものかもしれない。
まるで地球創成からの動物たちの進化にも似ている。海から陸に、哺乳類となって文明を築き、陸から空へ、空から宇宙に行った人間を見ているようだ。
そうだ!現場に行こう!ミウラのものづくり、あるべき姿とは?!
では今度は、設計者の皆さんに伝えたいことってありますか?
これからのミウラのものづくりをどうしていきたい、など聞かせてください。
三現主義(現場・現物・現実)という言葉があります。
精魂込めてデザインした図面が、どのような設備でどのような工夫苦労の中で製造されているのか、現場に足を運んで見て感じて学んでほしいです。「後工程と現場を知る」ことは、必ず次の最適設計に活きて繋がります。ぜひそういった経験を積んでほしいと思います。
三浦マニファクチャリングのような組み立て現場に行く設計者はそれなりにいますが、ものづくりの現場まで行く人ってあまりいないんですよね。
製造物のことを一番わかっているのは、毎日現物と向き合う現場の人です。その人たちの意見や考えを聞いて学ぶという姿勢を大切にしてほしいです。
現場がわかっている人の図面は、きれいに整っています。見やすいだけでなく、美しいです!
ものづくりの美学!
昔は、加工機にセットした部材の向きや基準線まで意識して描かれた図面が多かったように思いますが、今は、現場作業を考えながら描かれている図面が減りました。
とはいえ、設計はサプライヤーへの配慮や製造しやすさだけじゃなくて、製品がお客様のところに納品された後のメンテナンス性まで考えなきゃならないので、それはそれで大変ですよね…
設計をするということは、工程を指示することも含まれていると思います。
設計と現場を繋げるのは一枚の図面だけですが、それはまさに契約書であり、ラブレターだとも思っています。
設計者の皆さんは、自分の思いがきちんと届いたか、納入された部品を実際に目で見て、答え合わせをしてほしいです。
そして、サプライヤーは図面に無いことまでこなしてくれています。納入された部品には、図面にないノウハウが詰まってます。サプライヤーからの返事を真摯に受け止めるところまでやってほしいです。
そして、サプライヤーのフィードバックをちゃんと図面に残すことが、将来の新製品に役立ち、ミウラの財産となり、未来に繋がると思います。
製品や部品というのは、加工のしかた次第で耐久性や強度に大きく影響を及ぼします。設計者の皆さんには、図面には描くことができない「品質」まで意識して製造するサプライヤーに敬意をもって接してほしいです。
そして、自分の名前を残す図面には、自信と責任を持ってほしいです。
あと私は…「どうやったらやめれるか」を考えるのも、大事だと思っています。
生産品質は、初品には図面を添付して納品しないといけない、とか、品質異常を減らすためにチェックシートが必要、とか、プラスされていくことばかりでした。
後付けだから、コストにも反映されない。
ダブルチェック、トリプルチェックってやってるけど、別の誰かがカバーしてくれるだろうって思うから、逆にチェックの精度も下がる。
意味のない作業って、意外といっぱいあるんです。
それらを、いかに減らし、なくすか…それが私の今の課題ですね。
そんな課題を見える化するためにも、サプライヤーとの意思疎通が欠かせないわけですよ。
やはり行き着くところは、我々調達・生産品質こそが、サプライヤーとの信頼関係を大切に築きあげていかねばならない、ということです。
そして、その実現は、創業者の魂の言葉「愛は愛を生み、信は信を生む」の実践にほかならない、と確信しています!
見ル野CHECK!!
坪田氏は机の横に常にヘルメットを置いているという。管理職になってもいつでも現場に駆け付ける準備をしているということだ。持主氏もいつも作業着を着て同じ気持ちで準備しており、松添氏も常に現場を駆け回っているという。
現場主義、現場魂、人との繋がり主義、こんなハイテクな時代になっても大事なものはブレない。これが成長の根幹である。
彼らこそ、ものづくりの勝利を「調達」してくれる存在なのかもしれない。
あとがき
今回、その調達部を代表する3名の猛者たちのお話を聞くことができた。
坪田氏は部長であり、経験豊富ゆえに落ち着いている。すでに写経をやっていること自体が達観している。
持主氏は、ジョークが上手く、盛り上げ役でありながら周りにかなり気を使う人。笑顔の中でも鋭い眼を持っていて細かな所を見ている。
松添氏は、プライベートを完全に楽しむ一方、仕事のスタイルを持っているというケジメのできた方だ。
そんな彼らが、サプライヤーとの関わりや発注する側の心得など、興味深いお話を、未来のビジョンを踏まえながら、包み隠さず語ってくれた。
彼らの話は、ミウラの皆さんだけでなく日本のものづくりの将来にも影響するトリガーとなるだろう。