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ミウラとヒト

【サイボウズ×ミウラ】\ 青野さんに聞いた / 「オモロイ」の実現法。いらないものを手放せば「オモロイ」が見えてくる!

みなさんの会社には、合言葉になっているようなキーワードはありますか? 

ミウラの社内ではよく「オモロイことをやろう!」という声が飛び交っています。中でも代表取締役の宮内さんは「オモロイ」が口癖になっているほど。ただ、社員の間ではこの言葉の受け取り方が人それぞれであることも事実です。 

そこで今回は、先進的な働き方や人事制度で知られるサイボウズ社長の青野慶久さんと宮内さんが「オモロイ」をテーマに対談。2人の経営者がこれからの会社のあり方を語り合いました。 

ミウラのような長い歴史を持つ会社が「オモロイ」を実行するために足りないこととは……?

プロフィール

青野 慶久 AONO Yoshihisa (あおの よしひさ)

サイボウズ株式会社 代表取締役社長。大阪大学工学部情報システム工学科卒業後、松下電工(現 パナソニック)を経て、1997年サイボウズを設立。2005年に現職に就任。著書に『チームのことだけ、考えた。』(ダイヤモンド社)、『会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているのかもしれない。』(PHP研究所)など 


宮内 大介 MIYAUCHI Daisuke (みやうち だいすけ)

三浦工業株式会社 代表取締役 社長執行役員 CEO。1962年愛媛県松山市生まれ。1986年京都大学工学部資源工学科卒業。1997年三浦工業株式会社入社。首都圏事業本部長、米州事業本部長、アメリカ法人社長などを経て、2016年4月に代表取締役社長 社長執行役員に就任。同年6月より現職 

他と違うこと、誰もやっていないことがユニークだとは限らない 

青野

宮内さんの「オモロイ」は、どんな意図で発しているんですか? 

宮内

私の意図はシンプルに「他の人がやっていないことをやりたい!」ですね。 

企業には、既存事業をより良い形で伸ばしていく「ベター」と、新規事業を生み出していく「ユニーク」の2つの側面が必要だと思っています。今のミウラは、社員のみんなの頑張りのおかげでベターが強い反面、ユニークな側面は弱くなっている。だから口癖のように「オモロイことをやろう」と発信しているんです。 

青野

これは多くの日本企業に共通する課題かもしれません。 

宮内

青野さんはサイボウズにおいて、組織作りや制度作りでオモロイことをたくさん実現してきましたよね。新しいことをどうやって形にしてきたのか、ぜひ教えていただきたいんですよ。 

青野

宮内さんがおっしゃるように、私もユニークであることに「オモロイ」を感じます。手品を見ていても、ありきたりなトリックで結末が予想できてしまう内容だとオモロくないですから。 

宮内

はい。とはいえ、他の人がやっていないユニークなことを実現するのは非常に難しいのも事実だと思うんです。 

青野

最初から「他とは違うことをやろう」と考えても、オモロイことを生み出すのは難しいのかもしれません。なぜなら、他の人がやっていないことをいきなり打ち出しても、なかなか価値を理解してもらえないからです。 

たとえば車は通常四輪ですが、他がやっていないからといって「うちは五輪にします」と言っても、世の中には受け入れられないですよね。 

そうではなく、「車のタイヤは4つも必要なんだろうか」「お客さんは本当はどうしたいんだろうか」「そもそも車に乗らなくても済むようにするには?」など、本質的な課題について考えるべきだと思っています。 

宮内

たしかに、表面上の違いだけを追い求めても価値あるものは生まれづらいですよね。その程度の違いであれば他の誰かがすでに考えているかもしれません。物事の上流にある本質を考えるからこそ、他の人がたどり着かない着想が得られるわけで。 

青野

はい。 

さらに言えば、昔の人たちがチャレンジしてきた道のりの中には、アイデアとしてオモロイものの、当時の社会環境的に実現できなかったことが含まれているかもしれません。 

たとえばAI(人工知能)の概念は昔からありますが、たくさんの人がチャレンジを続けても良いAIを作れませんでした。でも現在ではクラウドコンピューティングによってものすごい計算力を駆使できるようになり、ディープラーニングによって賢いAIがどんどん生み出されています。

宮内

その意味では、アイデア自体が新しくなくてもいいのかもしれませんね。

青野

そうですね。今まで誰も思いつかなかったものを考えようとするだけでなく、既存のアイデアを見つめ直し、改めてチャレンジすることも大切なのだと思います。 

「自分がいかにものを知らないか」を前提に判断する 

青野

ユニークさを身につけるために、宮内さんが意識していることはありますか?

宮内

自分自身を過大評価しないことでしょうか。周囲の人とはよく「世界中の物事の中で自分が知っていることなんてごくわずかだよね」と話しています。 

青野

なるほど。いわゆる「無知の知」ですね。

宮内

はい。日頃からそう捉えていれば、誰かが奇想天外なことを言っても「きっと自分の知らない世界があるんだ」と思えるし、興味を持って学ぶ気持ちになれるんです。 

ビジネスパーソンとして経験を重ね、自分自身の専門性を持つことは大切です。しかし広い世界の中で新しい知見を得続けたいなら、「自分はしょせん大海に浮かぶ一粒の米に過ぎない」と思っていたほうがいい。事実、私を含めてほとんどの人はそうなんですから。 

青野

サイボウズの人事制度は、まさにそのくり返しで作られてきたように思います。 

新しい人事制度の策定は、基本的には社内の誰かが希望を口にすることから動き出します。私自身には思いもよらないアイデアが出てくることもたくさんあって、そのたびに合理性を見出して実現してきたんです。 

宮内

合理性、ですか? 

青野

はい。サイボウズの人事制度は「ユニークでオモロイ」と思われるかもしれませんが、実はすべて合理的なんですよ。 

たとえば育児休業は最大で6年まで取得できるようにしています。あるママ社員が「子どもが小学生になり、学童に入るタイミングまで休みを取れたらうれしい」と言ったことが発端でした。 

それで調べてみると、社員が6年間の育休を取っても会社としてはお金がかかるわけではない。それなら制度として実現し、社員の希望をかなえて会社に在籍し続けてもらったほうが合理的だと判断しました。 

宮内

会社としては何のリスクもないんですね。

青野

そうなんです。社員の副業も同様だと考えています。 

社員が副業を始めて社内の仕事を減らしたとしても、その分だけサイボウズでの給料が減るので会社としては損をしません。それに、社外で新たな経験や知識を身につけ、成長して本業に貢献してくれるようになるかもしれません。 

宮内

ただ、経営者の中には「副業によって本業への貢献度合いが低下するのでは?」と懸念する人も多いですよね。 

青野

私も、最初に社員から副業をしたいと言われたときは同じ気持ちでした。「まずはサイボウズの仕事で満足な成果を出してほしい」とも思いました。 

でも、社員の声を聞いていくうちに「この考え方が本当に正しいのか?」と疑問を持つようになったんです。これからのキャリアは、1社ではなく複数の場所で重ねていくことが常識になるのかもしれない。働く個人は、それができる環境を選ぶようになるのかもしれないと。 

「自分がいかにものを知らないか」を前提にして判断していなければ、これらの新しい試みが定着することはなかったと思います。 

議論はすべてオープン。みんなが当事者として納得できる仕組み 

宮内

サイボウズさんは、オモロイことを思いついてから実装するまでのスピード感がずば抜けていると感じます。 

青野

実際には早いものも遅いものもあるんですが、他社と比較して早く見えるのは、新しいアイデアが出るといきなり全従業員の目にさらされる仕組みがあるからだと思います。 

宮内

それはグループウェアによって共有されているんですか?

青野

はい。新しい議論が始まればすぐに全社共有し、オープンに意見を集めています。 

たとえば私自身のアイデアでは、サイボウズの取締役に女性が少ないことから「アファーマティブ・アクション(※)を実行して女性役員を半数にしよう」と提案したことがあります。 

それをグループウェアに書き込んだところ、あっという間に数十件の意見が集まりました。内容は「数合わせだけをしても意味がない」「本質的なアクションをすべき」など反対の声ばかり(笑)。それで私は提案を取り下げました。 

※積極的是正措置。少数集団の不利な状況を改善するため、採用や昇進などに特別枠や優遇措置を設けること。 

宮内

なるほど。会議にはからなくても、グループウェアが議論の場として機能していると。 

この仕組みがあれば、オモロイ意見がどんどん出てくるかもしれませんね。まず言ってみることで、誰かが反応してくれる。その感覚があれば発信しやすくなるように感じます。 

青野

発信するほうもラクなんですよ。 

たとえば社長として、来年の方針を完璧な形で発信しようとすれば準備に時間がかかりますよね。でも私の場合は、とりあえず手元にある情報をグループウェアに投稿していくことで、みんながどんどん「この観点もあります!」「この部分はこうしたほうが……」と意見してくれるんです。 

宮内

素晴らしい! まさに合理的ですね。 

青野

この議論を見守っているだけで精度の高い方針ができあがっていきます。かつ、多くの人がその議論の中身を見ているので、改めて説明しなくても方針が浸透していきます。 

そのためサイボウズの人事制度は、始まった瞬間からすぐに活用されていますね。みんなが議論の内容を見て、制度の趣旨を理解しているこそ、スピーディーに実装されるんです。 

宮内

ミウラは企業規模の割には決断が早いほうかもしれませんが、何か新しいことを始める際には「ノー」の意見を吸い上げるのに時間がかかっています。 

それに、改善提案を受けて議論が始まっても「検討しておきます」で終わってしまうことが多いようにも感じます。もっとたくさんの意見を集め、みんなが納得する形でイエスかノーかの結論を出せるようにしたいですね。 

みんなにとって不必要な「オモロクないこと」はやめるべき

青野

宮内さんは、ご自身のキャリアにおいても「オモロイ」を重視して歩んで来られたんですか? 

宮内

はい。できる限りオモロイことを選択して生きてきたつもりです。会社員人生では、オモロイことだけではやっていけない現実に直面することもありましたが。 

青野

「オモロクないけどやらなきゃいけない」瞬間もあると。

宮内

そう思います。 

身近な生活での例を挙げれば、歯磨きは多くの人にとってオモロクない作業でしょう。だけどやらなければ虫歯になってしまう。仕事にも同じような場面があるのではないでしょうか。 

青野

たしかにそうですね。私は、近くに置くオモロイと、遠くに置くオモロイが別々に存在しているようにも感じます。 

「あの映画を観に行きたい」は近くに置いた短期的なオモロイですが、「世界中にグループウェアを普及させたい」は遠くに置いた長期的なオモロイです。 

宮内

なるほど。自分という個人がオモロイと思うためのことはどちらかというと近くて短期的、みんなをオモロイと思わせるためのことは遠くて長期的なのかもしれません。

青野

人は、自分だけの話になると頑張れないものなのかもしれませんね。どんどんラクなほうへと流されてしまうかもしれない。 

宮内

逆に、オモロクなくて、みんなにとっても必要のないことはやめなければいけないんですよ。 

「会議のためだけに誰も見ない資料を一生懸命に作る」などはその典型例ですよね。だけど日本人の多くは生真面目だから、なかなかやめられません。 

私は「やめることを選択しない」ことがさまざまな場面で損失につながっていると感じます。日本企業が生産性の低さをずっと指摘され続けている背景にも、これがあるのでは。 

青野

同感です。やめること=サボることではないんですよね。むしろ不必要なことを積極的にやめていかないと、本当に必要なことができなくなってしまう。 

経営者や管理職のレイヤーでも、やめるべきことを引きずり続けているケースが少なくありません。それこそ現在運用している会議体の一つひとつにも、厳密に見れば不必要なものが含まれているのではないでしょうか。 

宮内

用意した資料を読み上げるだけの会議なんて、誰も必要としていないのかもしれませんね。 

それこそサイボウズさんのように日頃からオープンに議論していれば、いずれは会議そのものが不必要になるでしょう。これは大きな学びでした。 

宮内

もしミウラのみんなが身近なところで非合理的な「オモロなさ」を感じているのなら、遠慮せずに掘り下げ、もっと合理的でオモロイ仕事ができるように仕組みを変えていってほしいですね。やめることで誰かが困るものは続ければいいけれど、誰も困らないのなら勇気を持ってやめてしまうことも大切。 

そうしたアクションを全力で応援しながら、私も本気でオモロイ仕事のあり方を追求していきたいと思います。 

サイボウズ式

本企画は、サイボウズが運営するオウンドメディア「サイボウズ式」編集部との共同取材として実施しました。「サイボウズ式」では、おふたりが事業継承について語り合う対談記事を公開中です!

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