名刺は社内回収した紙から作っちゃう!?ミウラ流アップサイクルの秘密に迫る!
この名刺は、ミウラの社内で集められた使用済みコピー用紙から作られているって知っていましたか?
今回は、4年前(2019年)からスタートした再生紙を使った名刺作成について聞いてみました。
今回の登場人物
にしもり けいぞう
西森 桂三
ブランド企画室 印刷課 係長
プロフィール
1995年入社。27年目。入社直後は営業推進部に所属し、数カ月間、CADで図面作成を担当。
その後印刷課に異動、今に至る。
趣味は海釣り。
(フカセ釣りをメインに楽しんでいます。)
好きな食べ物は寿司&蕎麦。
ひろい まさゆき
廣井 政幸
取締役常務執行役員
サステナビリティ推進担当役員&ミウラジョブパートナー株式会社 代表取締役社長
プロフィール
1985年入社。37年目。
入社後はメンテナンス業務に従事。
2006年から本社勤務となり「eco仙人プロジェクト」※をスタートに、環境マネジメント推進に参加。
単身赴任のため休日は、もっぱらゴルフ。
苦手な食べ物は、発酵食品(特に漬物)。
ミウラジョブパートナー株式会社公式ウェブサイト
https://www.miura-job-partner.jp/
※「eco仙人プロジェクト」
2009年に発足した社内プロジェクト。各地域で行ってきたエコ活動を全社へも推進・展開し、省エネ意識改革を狙ったeco検定制度の運用など、社員一丸となって多くのエコ活動を実施しました。
独学で歩み続ける、27年目の印刷課
編集部(ウエノ):名刺作成の責任者である、西森さんに聞きます。
西森さんの入社当時、27年前の印刷課はどんな状況でしたか。
私を含めて3人という部署でした。
輪転機にオフセット印刷という時代でしたから、印刷用の版を焼くところから始めて、本当に「印刷」課でした。
ボイラのメンテナンスマニュアルや取扱説明書を作っていました。
編集部(ウエノ):西森さんは印刷課のリーダー、仕事で心がけていることはありますか。
「まずは自分がやってみる」です。
印刷においてもデジタル化が進み、常に新しい機械を扱う必要がある部署。
まず自分がやってみて、自分自身が理解できてから、メンバーに展開するようにしています。
誰かが丁寧に教えてくれることもなく、ほとんど独学です(笑)。皆さんと同じで、勉強し続けています。
ペーパーラボの特長と制限、名刺づくりの苦労
編集部(ウエノ):では、本題に移っていきます。
名刺に使用している用紙づくりは、SDGsの一環で導入されたPaperLab(以下、ペーパーラボ)という「再生紙を作る機械」を使用しているんですよね。まず、このペーパーラボについて教えてください。
ペーパーラボは正確には、「乾式オフィス製紙機『PaperLabA-8000』」といいます。
特長としては、
・社内の使用済み用紙から再生紙を作ることができる
・製紙に水を使わないので廃液が出なく、環境に配慮されている
・社内で機密文書を処理できる(機密文書をシュレッダーや溶解する必要がない)
といったことがあります。
ただし、制限もあって、
・A3とA4サイズの紙しか材料とならない
・両面印刷や片面印刷、モノクロ、カラーなど紙の状態によって作られる紙の質が大きく異なる
・ステープラー芯などはあらかじめ取り除く必要がある
などです。
ですから、再生紙の色が少し濃かったり、分厚かったりして、最初の頃の名刺はビックリされましたね。ネガティブなご意見をいただくこともありました。
その後何度も改良を重ねて、今は白さや厚みの面でも皆さんに納得いただける品質になっていると思います。
エプソン公式HP「乾式オフィス製紙機PaperLab 事例紹介:三浦工業株式会社」https://www.epson.jp/products/paperlab/customers/miura.htm
※導入当時の常勤特別顧問 管理本部担当の福島広司さんと西森さんのインタビューが掲載されています。
決定から設置、怒涛の半年。3カ月で再生紙製品を完成
編集部(ウエノ):便利で環境にも優しいけれど、一筋縄ではいかない印象を受けました。苦労はありましたか。
最初に話を聞いてから導入されるまでが長かったんです。
一度白紙になり、一年ほど保留。突然2018年の年末に導入されることが決定、しかも機械設置は2019年3月!導入決定から設置までの3カ月間で、すでに導入し稼動してる他社(東京)さんを訪問し情報収集、設置までのスケジューリングなど、とてもあわただしい準備期間でした。
同時に、ペーパーラボに入れるための紙を社内から集める必要もありました。
編集部(ウエノ):東京まで行かれたんですね。
バタバタでした。私を含む印刷課メンバー2人と、ミウラジョブパートナーの社員と3人で向かいました。
ペーパーラボを設置すれば終わりというミッションではなく、ペーパーラボを使って何を作っていくかということを企画し実行しなければなりません。
ペーパーラボが目的ではなく、手段です。自分たちで何を作っていくのか? 企画のヒントも訪問目的の一つでした。
編集部(ウエノ):設置された2019年4月以降の出来事を覚えてますか。
2019年は60周年という節目の年でした。
ペーパーラボのお披露目もかねて6月の株主総会ではCSR報告書と名刺、夏にはミウラフェアでノートとペーパークラフトを配布しました。
同時に、社内に向けてペーパーラボの紹介や環境に関する取り組みとして理解してもらうための資料を用意したり、名刺を配ったときに話のきっかけとなるようなSDGsを紹介するデザインを裏面に載せたり、製紙作業以外にもやることはたくさんありました。
リサイクルプロジェクト – ミウラジョブパートナー株式会社 (miuraz.co.jp)
簡単な操作と、難航する品質向上。SDGsの周知も課題
編集部(ウエノ):ペーパーラボの操作は専門的な知識が必要なのでしょうか。難しそうに思えます。
いえいえ、とても簡単なんです。メーカーの人も教えてくれないくらいです(笑)。
処理したい紙を入れてスタートボタンを押すだけです。それで再生紙が出てきます。簡単でしょ。
ただ社内から集まってくる紙にモノクロ印刷やカラー印刷、両面に片面といろいろなものがあります。これを仕分けてうまく組み合わせないと、出てくる再生紙の色味が濃く黒くなってしまいます。
名刺や報告書に使う紙が黒くては文字が読み取れません。
当時はまだ十分調整できていませんでした。今ではかなり細かく仕分け、品質を上げています。
編集部(ウエノ):再生紙の調整、そんなにも苦労があったんですね!
当時は、真っ白なきれいな名刺から、突然ザラザラとして分厚く、色の濃い再生紙に変更。
事前告知も十分でなく、驚いた方も多く、社内リクエスト(わたしのリクエスト)という形でいろんなご意見をいただきました。当時としては最大限の品質でした。
導入当時の2018~19年はSDGsの認知度は低く、多くの人が「SDGsって何?」という状況でしたので、戸惑ったかもしれません。
作成する目的や効果などの説明不足は反省点の1つです。
名刺としての再生紙の質を追求するチームと、社内向けの説明資料作成や名刺の裏側のデザインを考えるチームに分かれて進めました。
裏面は、SDGs、英語バージョンなど複数のデザインパターンから自由に選べるようにしました。
今では皆さんの理解も広まり、この用紙の味わいを気に入ってくれている社員の方もいます。
クオリティ重視の再生紙グッズ。今後の展開は…
編集部(ウエノ):2019年の立上げ時は、CSR報告書にノート・ペーパークラフトと、その製作も大変でしたね。
CSR報告書は6月末の株主総会で配ることが決まっていて、数も100部という大きな単位だったので大変でした。
続く7月後半のミウラフェアのノートとペーパークラフト配布でも、再生紙の品質を上げつつも、量を確保する必要がありました。
グッズ案はたくさん出ましたが、そのときに作ることができたのはその2点だけでした。
今後は販促品も増やしたいです。
サステナビリティや障がい者雇用への貢献
編集部(ウエノ):それでは続いて、廣井さん。今日は西森さんの上司としてのご同席、ありがとうございます。サステナビリティ(持続可能性)推進という観点から、ペーパーラボによる紙のリサイクルと環境・社会貢献の活動はミウラの中でどのように広がっていますか。
サステナビリティに対する考え方(三浦工業株式会社公式ウェブサイト)https://www.miuraz.co.jp/csr/various_policies/
西森さんが話されたように、2019年からペーパーラボによる再生紙づくりがスタートしました。
当時私は担当ではありませんでしたが、社内の環境推進委員会に所属。会社全体の廃棄物や水のリサイクル率を上げようと、CO₂の削減には着手していたけれどScope1・2・3、どの数字も抑えられていないという状態にありました。(現在は、1・2・3とも公開しています。)
まだ「環境経営」という言い方をしていた頃で、IT化を進め紙の削減(ペーパーレス)を推進していました。
メンテナンス部門のレポート類が電子化されたのは、当時大きな変革でした。
その後、環境推進委員会はサスティナビリティ推進会議にアップデートしました。ペーパーレスをさらに踏み込んで、ペーパーラボの導入による紙のリサイクルにも取り組むことになりました。
紙だけのリサイクル率は計算していないのですが、堀江・北条の工場で出ているゴミの70.8%がリサイクルされています。2030年・2050年時点での数値目標も決定しました。2030年で85%、50年には95%までリサイクル率を上げていきます。
そのためにも、ペーパーラボによるリサイクル率の上昇も必須です。いろんな紙のリサイクルをしないと数値目標に到達しません。さらに多様な使い方を検討することが重要です。
また、ペーパーラボ導入は障がい者の雇用の確保にもつながっています。
今後中期計画に沿った事業拡大が進み、社員数も増加すると、一定の割合での障がい者雇用を社会から求められます。ペーパーラボ以外にもさまざまな仕事を創出し、働ける場所づくりもしていかなければなりません。
ミウラにおける多様な人財の活用について(三浦工業株式会社公式ウェブサイト)https://www.miuraz.co.jp/csr/social/diversity.html
今後の課題と展開
編集部(ウエノ):改めて、リーダーである西森さんへの要望・期待はありますか。
ペーパーラボによる再生紙の作成と、ペーパーレスによって紙の使用を減らすことの両輪で、紙のリサイクル率を上げる必要があります。
繰り返すようですが、きれいな紙を作成するだけのリサイクルでは成り立たないと思っています。
名刺に使えるようなきれいな紙だけを作るのではなく、いろいろな紙を作って、機械の稼動率も上げて、2030年・2050年のリサイクル率の達成を目指してほしいと思っています。
編集部(ウエノ):廣井さんから紙のリサイクル率という数値目標を受けて、西森さんはどう思われますか。
ペーパーラボの稼動率は100%ではなく、現在60%程度です。枚数でいうと月間で4万枚。それでも社内で使っている紙の数%でしかありません。
製紙した紙がまだまだ倉庫で保管されています。廣井さんも言われた通り、販促品の企画・開発を含め、新たな使用方法を見つけて実行しないと、リサイクル率を上げるのは難しいと思っています。
今後も印刷課全体で考えていきます。
編集部(ウエノ):リサイクル率を上げるために、まだまだアイデアと協力が必要です。私も販促品案を考えてみたいと思います。また、今回の記事を通じて社員のみなさんが再生紙に親しみを持ち、率先して使っていただきたいです。今日はありがとうございました!
まとめ
ペーパーラボの導入決定から社内外へのお披露目までが半年ほどしかない中で、最大限の品質を求めるミウラのモノづくり精神が実感できました。
日本社会にSDGsが浸透する前から、具体的な活動と情報発信を粘り強く続けたこともわかりました。
また、ミウラジョブパートナーのメンバーによる丁寧な仕分けが、再生紙の品質に直結されていることも知りました。
小さな名刺1枚に、ミウラのSDGsへの意思と様々な人との関わりがあります。
ミウラの一人ひとりがペーパーレスや再生紙販促品について考え、そして行動してくれることが一番のSDGsだと思います。
ミウラグループ環境方針(三浦工業株式会社公式ウェブサイト)https://www.miuraz.co.jp/csr/environment/policy.html
ミウラの声を届けるラジオ「蒸熱!MIURADIO(ミウラジオ)」(三浦工業株式会社公式ウェブサイト)https://www.miuraz.co.jp/corporate/miuradio.html
※ミウラジョブパートナーの社員も出演しています!