
ミウラとヒト
「ソーラーカー」を真ん中に語る!技術者達のものづくり哲学(後編)
ソーラーカーづくりの経験がある技術者3名の対談、後編です。
前編では、1993年にミウラが出場した「ワールド・ソーラーカーレース鈴鹿」でのエピソードを中心にお話を進めましたが、後編ではものづくりの本質について迫ります。
今回も、名言がたくさん。ものづくりに限らず、仕事に向き合う姿勢を問われる対談となりました。ぜひ最後までお楽しみください。
前編では、1993年にミウラが出場した「ワールド・ソーラーカーレース鈴鹿」でのエピソードを中心にお話を進めましたが、後編ではものづくりの本質について迫ります。
今回も、名言がたくさん。ものづくりに限らず、仕事に向き合う姿勢を問われる対談となりました。ぜひ最後までお楽しみください。
前編の記事はこちら
「ソーラーカー」を真ん中に語る!技術者達のものづくり哲学(前編)
プロフィール
たなか おさむ田中 收
TANAKA Osamu
九州大学助手を経て1982年三浦工業入社。横ヒレ付き缶体、新規燃焼機器等の開発に携わる一方、水循環基礎を解明、1990年九大博士号取得。三浦研究所を経て、技術推進室にて熱・エネルギー機器開発、工場・プラントシステムの解析等の技術を支援。愛媛大学講師・客員教授のほか学会活動や学会賞授与等にも貢献。
たけだ ともひさ武田 知久
TAKEDA Tomohisa
資材調達統括部
1985年入社、社歴40年。生産技術部開発課、水処理商品開発部、ミウラカナダ駐在、技術部開発課、三浦研究所、GBL調達部、生産統括部、R&D製造加工開発室、資材調達統括部(現職)を歴任し、ものづくりの現場はひととおり経験。趣味は、釣りと旅行 + 面白そうなことを創造しやってみること。
たにもと きいち谷本 輝一
TANIMOTO Kiichi
生産技術部
2022年入社。都城メンテに配属、2023年に生産技術部に異動。ものづくりの自動化に関する業務を行う。趣味はマラソンやサイクリング。毎年、各地のマラソン大会に参加。学生時代に鈴鹿サーキットをソーラーカーで走る「鈴鹿4時間耐久レース」のチームに参加、ソーラーカー製作経験あり。
30歳若ければ何をしたい?

もし、30歳若ければ、やってみたいことはありますか?

僕がもし今の時代を生きる若者だったら、「無人でものを作ること」にこだわってみたいですね。昔はできなかったことだから。
例えば、今って、重いものでも簡単に持ち上げる技術があるでしょ。大きいロボットが、ボイラ丸ごと掴まえてどんな方向でも向けたりできるわけですよ。
今までできなかったことができるようになっているので、ものづくりを違う方向から眺めてみたいなと思います。
例えば、今って、重いものでも簡単に持ち上げる技術があるでしょ。大きいロボットが、ボイラ丸ごと掴まえてどんな方向でも向けたりできるわけですよ。
今までできなかったことができるようになっているので、ものづくりを違う方向から眺めてみたいなと思います。
私は、「熱エネルギー全般のシステムの合理性」について考えてみたいです。個性がみな違うので、それを見極めて適切なものを選ぶベストマッチングはあり得るのかどうか。
出来上がったものの組み合わせになる可能性もあるし、互換するものもあるでしょうからね。AIも使えるから、昔に比べてやりやすいと思う。機器がついていかんかもしれんけど。
出来上がったものの組み合わせになる可能性もあるし、互換するものもあるでしょうからね。AIも使えるから、昔に比べてやりやすいと思う。機器がついていかんかもしれんけど。
おふたりとも、経験を重ねたからこそ出てくる言葉ですね。僕も精進します・・・!
ものを徹底的に「知る」

新しいことをはじめるときって、どういう気持ちで臨みますか?アイデア出しは何を意識しながらやっていきますか?僕は、新しいことをするときに、迷ったり、どうしよう・・・と悩んだりすることが多いです。
新しいものって、自分だけで思いつくことは少ないですよね。
会議で意見交換していたり、現場でいろんな人と話していたり、いろんなケースがあると思いますけど、誰かと関わっているときに出る気がします。
常にほかの人、ほかのグループと新しいコミュニケーションを取っておくのがいいと思います。
会議で意見交換していたり、現場でいろんな人と話していたり、いろんなケースがあると思いますけど、誰かと関わっているときに出る気がします。
常にほかの人、ほかのグループと新しいコミュニケーションを取っておくのがいいと思います。

自分のできる範囲内でチャレンジできそうなら、絶対やってみる。1から10までをやるんじゃなくて、ちょっとはみ出してもいい。事故にさえならなければ、それは絶対糧になるんですよ。多少の失敗をしたって、それは糧なんです。

今までいろんなものを作ってきたけれど、まずは「そのもの自体を徹底的に知ること」なんです。全部見えないと次の世界のものが見えないので。調べていくと、「本当はこういうものが必要」っていうものが見えてくるはずなんですよ。でないと、新しいものの必要性がないから。
たとえば、「こういうクレームがあるからなんとかしたい」って思うでしょ。その場合は、そのクレーム自体を徹底的に知らないといけない。なぜ発生しているかという要因が掴めない限り、次のものは見つけられないと思うんですね。
そこまで行くと、何が起こるかと言ったら・・・頭の中で、寝ている間もそればっかり考えるようになるんです。不思議なことに、夢の中で答えが出てくることもある。そこまで頭の中を、そのものごとに浸からせないといけない。
たとえば、「こういうクレームがあるからなんとかしたい」って思うでしょ。その場合は、そのクレーム自体を徹底的に知らないといけない。なぜ発生しているかという要因が掴めない限り、次のものは見つけられないと思うんですね。
そこまで行くと、何が起こるかと言ったら・・・頭の中で、寝ている間もそればっかり考えるようになるんです。不思議なことに、夢の中で答えが出てくることもある。そこまで頭の中を、そのものごとに浸からせないといけない。
えっ!夢の中ですか!

僕が開発に関わった真空破壊弁DDVBは、タコの吸盤から着想を得ました。開発当初は漏れることが問題になっていて、「なんでかな?」って考えたんです。「じゃあ濡れないものって何なの?」って考えた。
そのとき思いついたのがタコなんです。タコみたいにくっついている状態ができたら濡れないかもって。
それで、スーパーで奥さんに「このタコ買って」って言って。大きい吸盤のタコを買って、ナイフで切って、インクでぴちょっと押して、会社に持っていって、その形状のものをつくったんです。
そのとき思いついたのがタコなんです。タコみたいにくっついている状態ができたら濡れないかもって。
それで、スーパーで奥さんに「このタコ買って」って言って。大きい吸盤のタコを買って、ナイフで切って、インクでぴちょっと押して、会社に持っていって、その形状のものをつくったんです。

これは一例ですけど、そういう関連性って実はあるんですよね。応用がすべて。経験や知識を、アレンジして使う。
あの時のタコ代、請求しとけばよかったかな~(笑)
あの時のタコ代、請求しとけばよかったかな~(笑)

真空破壊弁DDVBは、タコから生まれていたんですね。仕事だけではなく、プライベートの時間も知識や経験になる・・・。引き出しにいろいろ入れておいて、必要なときに取り出せるようにしておかないといけないですね。
現実をよく見て、何がいけないのか?という問題意識を持つ。今の世の中を眺めていく。僕らがやってた頃にできなかったことで、今できるものはたくさんある。便利なものもたくさんある。でも、関係ないものと組み合わせてもしょうがないので、必要なものをチョイスする。
そのもの自体をよく知っておかないと、何をチョイスしていいのか分からないから、とにかく興味があることに浸ることをまずスタートにした方がいいと思いますよ。
そのもの自体をよく知っておかないと、何をチョイスしていいのか分からないから、とにかく興味があることに浸ることをまずスタートにした方がいいと思いますよ。
まずは自分がよく「困る」こと

世の中、「これは何にでも使える」っていう便利なものがあるけれど、結構ええ加減なものも多い。原理的にいうと、おかしいもの。本質を調べると、「こんなものか」って思う可能性もある。
「できる」って言われているものって、案外できないんです。
限られた範囲ではできるけど、一歩ズレたらもうできないっていうものが意外と多いんですよ。
限られた範囲ではできるけど、一歩ズレたらもうできないっていうものが意外と多いんですよ。

浅い知識でそれをやっちゃうと、トラブルが発生してしまう。ちょっと時間かかるけど、急がば回れ。じっくり捉える方が絶対いい。
洗濯機って、女性の声で普及していったと言われていますが、「洗濯は大変!」「私、こんなことしたくないわよ」っていう、困った気持ちがあったから発達していったんですよね。まずは、自分がよく困ること。それが大事!逆に成功するより失敗していった方がいいかもしれない。
洗濯機って、女性の声で普及していったと言われていますが、「洗濯は大変!」「私、こんなことしたくないわよ」っていう、困った気持ちがあったから発達していったんですよね。まずは、自分がよく困ること。それが大事!逆に成功するより失敗していった方がいいかもしれない。
「困ること」ですか・・・。たしかに、技術者は「“困りごと”を技術で解決したい」という本能がある気がします。
スペックっていうのがあるでしょ。「仕様」っていうのがね。仕様外の限度というか、いろんなトラブルがいっぱいあるわけです。だからトラブルがあるまで、それを掘り下げて本当の原因は何かというのを見つめる努力がないとダメですね。
だから「あそこで使えてるから、ここでも使えるやろ」っていうのはほとんど使えないと思った方がいいんですよね。環境は変わるのが前提。そこをよく学習してからいろんなことに取り組むと、意外と見方は変えられる。

悩んだ時に、徹底的に悩むのがコツかもしれない。
いろいろやっているからこそ、見えてくるものがあるんですね。すごい人たちって、自然となんでもできちゃうイメージがあったんですけど、やっぱり苦労って大切なんですね。苦労は悪いことじゃないんだなっていうのが分かりました。
苦労を苦労と思っていないのかもしれません。苦労と思った瞬間に多分やらなくなるから。
半分趣味の感覚。仕事は趣味。悩むことすら、面白い。
「悩む」というより、知りたいと思う「探求心」なのかも。知れば知るほど奥が深い。ものごとがだんだん分かってくることの方が意外と楽しいですよね。
いろんなことを解析するにも、最初に何が必要かって言ったら物の性質なんですよ。物性がないと解析できない。物の性質がわかってないと話はできんのですよ。

なるほど・・・深いです。
新しいものをつくるときは、既成概念に囚われないことが大事ですね。既成概念にこだわると、問題をスルーしてしまう。
例えば「これって強度が足りないんじゃないか」と疑ったとする。そしたら、ハンマー持ってきてパーン!ってたたいてみるんです。でもそこで「こんな状況は絶対に起こりえない、壊れる事はない」とスルーしちゃうと、そんな時に限って問題点を見過ごしてしまうんです。
例えば「これって強度が足りないんじゃないか」と疑ったとする。そしたら、ハンマー持ってきてパーン!ってたたいてみるんです。でもそこで「こんな状況は絶対に起こりえない、壊れる事はない」とスルーしちゃうと、そんな時に限って問題点を見過ごしてしまうんです。

とにかく自分で確信が持てるまで、いろんな方法で確かめる。
そういうトライアルの仕方って、簡単じゃないし、時間もかかるけど、かならずヒントになるんです。自分の引き出しになり、財産になる。
そういうトライアルの仕方をぜひやってみてほしいし、やれる環境になってほしいなと思います。
そういうトライアルの仕方って、簡単じゃないし、時間もかかるけど、かならずヒントになるんです。自分の引き出しになり、財産になる。
そういうトライアルの仕方をぜひやってみてほしいし、やれる環境になってほしいなと思います。
結局は、やってみないとわからないんですよ。

今日おふたりに話を伺って、ミウラにはチャレンジさせてくれる基盤があることが分かりました。いろいろやらせてもらえますかね・・
やらせてくれるんじゃないですかね。それをアピールするだけのネタを作るしかないかな?という気はするけどね。
できる限り、自分で確認する。やれる範囲でいいから。与えられたことだけやってたら、それ以上には進まないですよね。
ありがとうございます。まずは自分でやってみます!

まとめ
今回は、お二人の「ものづくり哲学」に触れることができました。まずは、徹底的に「知る」こと。そしてこれって本当かな?と「疑う」こと、自分で「確かめる」こと。今は便利な時代で、調べる方法はいくらでもあるし、AIがなんでも答えたり作ってくれたりします。でも、自分の経験の組み合わせでしか解決できないこともある。そして、そのモチベーションは「知りたい」という気持ち、ものづくりへの情熱だということを確認できました。すばらしいお話をありがとうございました。